北村写真機店で行われている市橋織江さんの展示を見てきた。友人とのランチの場所が新宿だったので、ランチの後に、「イニシェリン島の精霊」を見て帰ろうと思っていたが、店を出た時には、すっかり映画が始まっている時間だった。帰宅しようと歩き始めたら、北村写真機店で市橋織江さんの展示があることを思い出して寄ってみたのだった。
市橋さんの展示の前は渡部さとるさんの展示があったはずなのだが、それは知らずに見逃してしまった。もう少し、ギャラリー情報に目を通すべきだった。
市橋さんの展示「サマーアフターサマー」はカラー写真では、数少ない好みのもので非常に良かった。それはネガカラーで撮られた色調もさることながら、人が写ってないものの人の気配を強く感じるものだったからだ。この作品は、松本広域連合と言う松本地域の8自治体の広報の一環として地域の写真の撮影を市橋さんと渡部さんに依頼したものだそうだ。しかし観光名所的なものは何も写らず、そこに写っているのは信州松本の人々の暮らしの場所だ。人は写っていないものの、生活が写っていて、写真をみていると様々なことが想像される。
作者の意図を理解できないのであろうが、写真がイラストによって加工されているのが少し残念だった。写真だけを見たかった。市橋さんの作品では、プラハを取ったシリーズが非常に良かったと思い出す。自分もプラハを撮影したが、カラーとモノクロの違いはあると言え、才能のある写真家の手によるプラハはまるで別物だった。
この松本広域連合の広報計画で、市橋さんと渡部さんにその地域の写真を依頼すると言う手法は非常に興味深い。観光と言う目的で、非常に見慣れた、その地域の観光名所の写真など、既に消費され尽くして、擦り切れたイメージしかないものだ。それで、その地域を訪れたいと言うような人はまずいないだろう。
しかし、市橋さんと渡部さんが捉えた世界を見て、この松本と言う地域に関心を持つ人は数多くいるはずだ。映画やドラマの聖地巡りが観光のきっかけになることが多い。その意味で写真家がとらえたあるイメージが、その地域の観光に寄与する事は大いに考えられる。もっと多くの地域が同じような取り組みをしても良いのかもしれない。
北村写真機店のイベントスペースにはガラスの壁越しだが、大型の映像が流されていてしてしばらく見たが、やはり壁が邪魔で集中できなかった。家に帰ってYouTubeでもう一度この映像をよく見てみると、写真では邪魔だったイラストが、映像では写真とのコラボが非常にうまくいっており、面白かった。写真と新しいものを映像で組み合わせるということを考えたこともなかったが、今後は写真の新たな表現として増えるのかもしれない。
展示を見た後は階段を降りて、ふと思い立って、久しぶりに中古カメラを少し見た。それで驚いたのはライカレンズの価格だ。以前よりは価格が3倍位になっているような気がする。各焦点距離毎に、すでに十分なレンズを持っているので、新たに買うつもりはないなが、今のような高価格ではとても手が出ない。前に聞いた話では、ミラーレスカメラが出てライカレンズがアダプターを介して取り付けられるので価格が高騰したと言うことだった。理由はともあれ、とても手が出ないような値段のレンズをしばらく見て帰ってきた。