久しぶりの暗室

by Shogo

久しぶりに暗室に行ってきた。来期から担当する新しい授業の、とりあえず骨格ができつつある。気分的にも少し楽になったし、ランチや会食、旅行の予定も考えると、昨日しかないと言うことで、初めての貸暗室に連絡をすると、空いていた。

長い間通ったカロタイプは、白岡さんが亡くなって後も、新しい経営で営業が続いていたが、一昨年に完全に閉鎖されてしまった。自宅暗室は、頑張って整理をすれば復帰できるが、この寒さではプリントができない。暖房もない、ガレージ暗室だからだ。

それで、八丁堀のアトリエ シャテーニュに電話をしてみた。以前、ヒットオンという貸暗室があり、カロタイプに行くようになるまで何度か行ったことがあった。それに、築地から八丁堀あたりにかけては会社員時代の生活圏だから、何か地元のような気がして安心感がある。それで、アトリエ シャテーニュを選んだ。と言っても潤沢に選択肢があるわけでもないのだが。

ウェブで情報を見ると、自宅で使っているのと同じフォコマートIIcがあった。電話で聞くと、それも空いていると言うので、久しぶりのプリントと言うことでワクワクして出かけた。

行ってみると、アトリエ シャテーニュは素晴らしい環境で、暗室が完全に個人の使用になっていた。つまり、引き伸ばし機とプリントのための薬剤のバットが独り占めで、最後に水洗の場所までついている。広さも十分にありプリントに集中することができる。

反面、カロタイプと違って、引き伸ばしをしながら会話したり、現像液などの薬剤のバットの前で並んで、話しながら作業すると言うこともない。暗室の外へ出て、水洗い場で来ている人と会話をすると言うこともない。カロタイプでのコミュニティー的な感覚に慣れていたので、個室暗室はプリントするということを考えると素晴らしい環境なのだが、誰とも話をしないと言うのも、少し寂しいとも思った。とは言え、プリントすることだけを考えれば、個室なので電灯を灯して明るくするのも自由だから効率がいいのは間違いがない。アトリエ シャテーニュのプリントをする環境は素晴らしい。多分これ以上のものはないだろう。

アトリエ シャテーニュには、ヒットオンの林さんがいて、聞くと経営を文化振興を目的する財団法人に売却して今の形で営業していると言うことであった。

フィルムで写真を撮ってプリントをすると言うことをする人が加速的に減少している。そんな時代に貸暗室の経営が難しいと言う事は自明だ、それでも、暗室を相続させてくれていると言う財団法人のおかげで、東京に暗室が残っているのは素晴らしいことだ。できれば、いつまでも、少なくとも私の寿命の続く間は残してほしいものだ。

最後にプリントしたことを考えてみると、パンデミックの間は行っていないので、その前はと言うと、ラグビーワールドカップのために多分3年ほどは暗室どころではなかった。そう考えると、6年ぶりと言うことだろうか。その間に撮ったネガもたくさん溜まっている。ロンドンで撮ったネガは、カロタイプに行っていた頃に、ある程度プリントをしている。だが、それ以降のバルセロナ、パリ、ローマ、リスボンについては全く手がついていない。老後の楽しみにこれからプリントしようと考えているので急ぐ必要はないので、とりあえずローマのネガを少し選んで持って出かけた。ローマでもブローニーを50本以上取っているので、この中からプリントしたいものを選ぶだけでもかなりの作業となる。

久しぶりのプリントで新しい環境と言うこともあり、最初はコントラストと濃度が、なかなか決まらずに試行錯誤した。最終的には、ネガの濃さや被写体を考えて、コントラストを決めて、露光時間の調整はテストプリントで行った。

だんだん感覚がよみがえってきて、最終的には20枚ほどのプリントを作った。以前よりベタを作らずにプリントしている。だが、ブローニーが50本以上もあると、プリントするコマを選ぶも手間がかかるので、時間があるときに下手を作った方が良いのかもしれない。と言っても、いつ時間があるのだろう。

印画紙はロンドンのシリーズの半切から1つ下げて大四切のベルゲールを、4、5年前に買っていた。使用期間のことが少し心配だが、夏は涼しい地下で保管していたためか、問題は無いようだ。濡れた状態でしか見ていないので、乾いてどうなるか。

アトリエ シャテーニュでは、乾燥とフラットニングが終わったプリントを翌日に受け取ることができると言うので、旅行から帰って、いくつかランチと会食の予定がある日を避けて、またプリントに出かけようと考えている。

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