今朝読んだオオカバマダラと言う蝶の記事から自然に無駄なものはないということを改めて思い出した。特に蝶々が好きなわけではないが、記事のタイトルはオオカバマダラの羽の斑点の秘密と言う、まるで釣り記事のような謎っぽいタイトルだったからだ。しかも、オオカバマダラなら読まなかったが、英語なのでmonarch butterfliesという偉そうな名前だったということもある。
記事の写真を見ても、このオオカバマダラと言う蝶は見たことがない。主にカナダ南部から南アメリカ大陸の北部まで生息するようだ。
この蝶が有名なのは、夏の住処のカナダから、冬の住処のメキシコの山まで、渡り鳥のように3000キロ以上も旅をすることのようだ。記事によれば、この3000キロ以上の旅に成功するのは30%ほどと言う。30%とは言え 3000キロも蝶が飛ぶと言う事は驚きだ。
記事のポイントは、この蝶の羽の模様が、飛行効率に影響を与え、3000キロの旅行を可能にしていると言うことだ。この蝶のオレンジ色の羽は縁が黒く、そこに白い斑点がある。その斑点が個体によって数が一定していないそうだ。研究者たちは出発地のカナダと到着地のメキシコでこの蝶を採取して、その模様を調べた。
結果としては、到着地のメキシコでは、白い斑点の数の多い個体が多かったと言う。メキシコまでの3000キロの旅を成功させた要因が白い斑点の数と研究者は考えている。
この研究者たちの推測によれば、羽の端にある黒い帯の中の白い斑点は、熱と冷却のポケットを作り、上昇する空気の小さな渦を発生させることで、空気抵抗を減らしていると言うものだ。この飛行能力が3000キロの旅を成功させる。
蝶々の羽の模様など工業製品のように一定のものだと考えていたが、少なくともオオカバマダラについては違うらしい。たぶん、日本にいるような他の蝶の模様も微妙に違っているだろう。それは人間でも、顔や体型がそれぞれ違うのと同じことなのかもしれない。
羽の模様の違いという多様性をオオカバマダラが持っているために、その個体の中に熱と空気力学の特性によって高い飛行能力を持つものが現れるということだ。つまり、自然がこの蝶に与えた模様の多様性が、夏の住処から冬の住処への渡りを成功させ、種の保存につながっている。
アインシュタインは、神はサイコロを振らないと言ったが、自然はサイコロを振るようにランダムな模様を発生させて、その中の、ある個体が種の生存に関わる能力を持っている。
1つの種でも、そのような多様性が生態系の安定をもたらしているように、すべての生き物の多様性は、地球全体の生態系の安定に何らかの形で関係しているものと思われる。
ついでに、Wikipediaでオオカバマダラのことを見てみると、この3000キロ以上の南下の旅は1世代で行われ、メキシコからカナダへの北上の旅は3世代から4世代にわたって行われるそうだ。この理由は書かれていなかった。そして、大移動の理由が幼虫の食べる草を枯渇させないために移動すると考えられていると言う。
この食糧問題が、南下が1世代で北上が数世代の理由と思い至った。つまり夏にカナダで多くの密を食べ、脂肪を蓄えたオオカバマダラは3000キロの旅に耐えられるが、冬にメキシコで過ごしたオオカバマダラは食料の花の密が十分に得られないために、3000キロの飛行はできないのかもしれない。だから、数世代かけてカナダに戻る。そこまで考えると、この地球と言う生態系は、季節と言うサイクルを持つことによって、さらに多様性を担保するメカニズムを持っているのだと思った。
連想するのは、なぜユーラシア大陸で文明が発展したかと言う理由が、この大陸が東西に長く、同じ様に季節が巡るので農耕技術を採用できたと言うことだ。季節と人間の営みに大きな関係がある。蝶の場合にも季節があるからこそ、カナダとメキシコを行き来して幼虫の餌になる植物を壊滅させない仕組みを持っている。自然と季節との共存の答が3000キロの渡りだ。
私たち人間はそのような移動の習慣はもはや持たず、定住した。そして、農耕技術・科学技術を発展させてきた。その結果、地球が対応可能な規模を超える個体数を持ち、その生活様式を高度化したことが、今の環境問題なのかもしれない。