スイスのビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)が調べているIMD国際競争力ランキングが今年も発表されている。日本は35位と昨年よりまた1ランク下がった。毎年順位を下げているので、2019年の30位から、ついには35位。もうすぐ40台も見えてきそうな感じがする。かつて日本はこのランキングで1位を占めていた。30年前の前世紀だ。
IMD国際競争力ランキングは、経済の健全性、政府の効率性、ビジネス効率性、そしてインフラの4つのカテゴリーの300項目に基づいて、64カ国を評価している。日本の評価が低いのは、経済の健全性と政府の効率性のカテゴリーだ。
経済の健全性については、税や社会保障などの高い負担と人口減少の問題に直面していることが、経済成長のペースを鈍化させ、日本の競争力を損なっていると判断しているようだ。これには、様々な見方があり、これには反論すべき点もあるが結果から見れば、妥当な判断か。
政府の効率性については、誰もの意見が一致する。思い切った政策の実施と規制緩和に関して、何も実効が上がっていないことが明白だからだ。最近の話題のデジタル化も進んでいないことでも明らかだ。無策で、ビジネス環境の改善ができなければ、イノベーションを生み出す土壌もできない。JTC(Japanese Traditional Companies)と呼ばれる、古い大企業の跋扈を許しているのも、大きな失策だ。政府の無策が、硬直したビジネス構造を生き長らえさせ、国全体の活力を下げている。Uberが営業できないことだけみても明らかだ。ランキング1位に輝いていた1980年代から1990年代にかけての日本はもはや面影は無い。
このランキングのベスト10にアジアから入っているのは、4位のシンガポール6位の台湾、7位の香港だけだ。はるかに経済規模の大きい日本、中国、韓国、インドはベスト10には入っていない。
ベスト10を見ると、1位がデンマーク、2位アイルランド、3位スイス、4位がシンガポール。5位にフランス、6位が台湾、7位が香港、8位がスウェーデン、 9位がアメリカ、そして10位がUAEとなっている。ここでも、目につくのはドイツやイギリスがはいっていないことだ。
日本は、このランキングでは、上位の国にはるかに及ばない国になってしまっているようだ。最近の政策でも異次元の少子化対策と言っているが、発想が20世紀の豊富な労働力のGDPの高い国のイメージでしか、国の未来を考えていないとことの表れだ。必要なのは、少子化対策ではなく異次元の教育改革でや異次元のベンチャー企業育成である。優秀な若者を育て、彼らが様々な産業を起こしていくこと助けることだ。しかしながら、現在までの政府の政策は新たな発想がなく、JTCの古い仕組みを温存し、次世代が活躍できる社会を作ってこなかった。
仮に日本の人口が減って、結果的にGDPが減少しても、残っている日本人が幸せで質の高い生活を享受できるのであれば、それではそれでいい。その中で、社会インフラや治安・安全を確保してゆく国力維持のために、付加価値の高い産業を起こしていくことが最も重要と考えられる。
電気製品や車を安く作るという時代は終わろうとしている。付加価値の高い、新しい産業を育成すべきだろう・当然、インターネットビジネスということになるが、これには時間がかかる。そこで、日本の伝統や歴史から生まれる多くの物品・サービスが世界市場で競争力を持つ可能性は高いので、日本独特の製品を、まず短期的に輸出を助成するのはどうだろうか。日本には、世界の人が欲しがるような陶磁器、漆器、刃物を始め、和紙や着物から派生する製品など様々なものが考えられる。このような分野の企業が輸出で成長すれば、そのブランドを生かしたビジネスもあとに続く。そのような起業や産業を促進する政策がないことが、日本が衰退途上国と言われる所以だ。もう少し何とかならないものだろうか。