– 世界的な傾向と背人材派遣会社のマンパワーグループが2024年3月に発表した最新の「グローバル人材不足調査」によると、調査対象となった約40カ国・40業種、約4万社のうち、75%が人材確保に苦戦していると回答したと言う。
これは2017年の同調査での45%から大幅に増加しており、人材不足問題が世界的に深刻化していることがわかる。これは、調査開始の2013年では36%だったことを考慮すると、状況は年々悪化している。
国別にみると、日本は深刻な少子高齢化社会であるため、2017年と最新の2023年の調査でも、人材不足に直面する企業の割合が85%〜89%と非常に高い数値で世界トップに位置している。
ドイツでも高齢化と高学歴の移民受け入れ不足から、人材確保に苦しむ企業が2017年の約50%から2023年には82%に急増している。日本と同様の問題があるようだ。ドイツでは移民労働者の受け入れが進んでおり、日本と同じ問題がないと思っていたが、そうでもないようだ。
予想したように、人材不足の問題を持つのはイギリスも同様だ。EUを離脱したために、外国人労働者の流入が困難になったことで19%から一気に80%まで跳ね上がっている。このような人材不足もインフレ率を押し上げる要因になっているものと推測される。
読んだ記事によると、日本、ドイツ、イギリスとは違う形で人材不足に悩んでいるのが、インドだ。インド特有の問題は、求職者のスキルと企業ニーズとのミスマッチにあるそうだ。多くの若者が失業し、政府や民間が提供する限られたポストに殺到する一方で、インドの教育システムでは市場の求めるスキルが学生に身についておらず、「雇用できない」人材が生まれてしまう傾向があるという。
株式市場でも、今後のGDP の成長でも期待されているインドだが、急速な成長は、能力の高い人材を必要とすることは疑いようもない。しかし、人口の多いインドでも、高学歴や高度に職業訓練を受けた人材の不足が発生してしまっているようだ。それだけ、成長のスピードが速いと言うことでもある。
日本の労働市場は、少子高齢化に加え、多くの課題がある。まず、挙げられるのは労働流動性が低いことだろう。最近は、経験者を中途採用する企業が増えてきたが、新卒一括採用の慣行が根強い。これは、企業にとって人材確保の安定化、人材育成の効率化などのメリットがある。しかし、一方で、学生にとっては職業選択が難しく、企業にとっても優秀な人材の中途採用が難しいなどのデメリットもある。
もう一つの問題は、正規雇用と非正規雇用の区別が明確で、非正規雇用の比率が高いことだろう。昭和的な慣行の終身雇用と年功序列を守るために、現時点の正規雇用が守られている。このために、非正規雇用が安全弁として使われ、非正規雇用の能力の開発が進まないことだ。これは、結果的には企業にとっても社会にとっても大きな損失になる。
その結果が、長時間労働の問題だ。日本の労働時間は諸外国と比べて非常に長く、OECD加盟国の中で平均年間労働時間はトップクラスだ。厚生労働省の調査によると、2022年の日本の年間労働時間は1644時間だった。これは、アメリカ(1338時間)、ドイツ(1346時間)と比べて300時間以上も長い数字となっている。
この長時間労働の問題は、労働者の健康や生活の質を低下させ、生産性にも悪影響を及ぼし、過労死や過労自殺などの問題も繰り返し起こることになる。
さらなる問題は、女性の活躍推進が進んでいないことだ。以前に比べ、女性の社会進出は進んではいる。しかし、まだ十分とは言えないし、グラスシーリングの問題も多い。人材不足解消のためには、女性の活躍推進が重要だろう。
このように、人材不足問題への対策として、高齢者や女性、外国人材の活用促進が考慮すべき課題だろう。さらには、AIやロボットの導入、働き方改革も重要だ。日本経済が持続的に発展していくためには、人材の量と質の両面から、教育と継続的なスキルアップ、中途採用市場の活性化も考慮すべきだ。