PYMNTS Intelligenceが発表した「How the World Does Digital」を読んで、暗澹たる気分になった。
このレポートによれば、ブラジルは驚異的な勢いでデジタル変革を進めており、消費者によるデジタルサービスの利用においてトップに立ち、世界をリードしている。一方、日本ではデジタルへの取り組みが他の調査対象国と比較して最も低い結果となった。
ブラジルのデジタル変革の成功は、2023年にブラジル中央銀行が立ち上げたインスタント決済アプリ「Pix」の普及や、1999年から現在に至るまで広く利用されているeコマースプラットフォーム「Mercado Libre」の存在が物語っている。この背景には、スマートフォンの普及率が3分の2に達し、92%の人が少なくとも4Gネットワークにアクセスできるという、ブラジルの強固なデジタルインフラがある。だが、この点では日本も引けを取らない。何が違うのだろうか。
また、ミレニアル世代やZ世代を中心とした若年層のデジタルリテラシーの高さ、そして政府主導による積極的なデジタル化政策も、このデジタル熱狂を後押ししていると考えられるそうだ。この点では日本の若者も同じと思う。ただ、その人口が少ないだけだ。
ブラジルの消費者は平均して月に361日(1日12回)デジタル活動に参加しており、これは調査対象国中で最も高い数値だった。ビデオストリーミングやモバイルバンキング、モバイルゲームなどが特に人気で、多くの消費者がこれらの活動に週に一度以上参加している。
一方、日本はデジタルエンゲージメントの面でかなり低い数値を示している。日本の消費者は月に127日(1日4.2回)のデジタル活動にしか参加しておらず、これはブラジルの約3分の1に過ぎない。日本のデジタル活動は主にメッセージングやオンラインショッピング、ニュースの閲覧に集中しているが、全体的なエンゲージメントは低い。この差は、デジタルインフラは両国とも整備されているので、消費者行動の違いに起因する可能性がある。
このレポートでは日本のデジタル変革の進捗が遅れている要因として以下のように指摘している。まず、高齢化だ。デジタルネイティブの若者人口が少ないこと、そして高齢層のデジタルリテラシーが低いことが、デジタルサービスの利用を妨げる一因となっている。
そして文化的要因もあると指摘している。現金主義や対面でのコミュニケーションを重視する文化が根強く残っていることも、デジタル化を阻む要因の一つだそうだ。
さらに、企業側の課題もある。既存のシステムやビジネスモデルからの脱却ができず、セキュリティへの懸念が強いといった企業側の対応もデジタル変革を遅らせている要因と考えられているようだ。
スーパーで現金を数えて支払う人がいて、待たされてイライラすることがある。デジタル化が進まない要因は、やはり、このような行動にも起因するのだろうか。政府もデジタル決済にポイントをつけて普及に努めたが、まだ十分ではないようだ。それと、これは多分だが、日本のテレビ放送が質はともかく豊富なコンテンツマーケティングの量があるので、デジタルなコンテンツに進まないということも考えられる。これも、習慣だからいきなり変わらないだろう。それらを考えると、最終的にはすべての理由は高齢化社会ということになりそうだ。
経済でもデジタル化でもランキングの下位にいるのを見ると気分が沈む。