OpenAIの苦境

by Shogo

OpenAIは、2022年11月にChatGPTを公開して以来、急成長を遂げてきた。2023年1月には290億ドルの評価額を達成するなど、史上最も急成長したスタートアップの一つとなっている。

しかし、ChatGPTの運営コストが高く、OpenAIの財務的持続可能性に対する懸念が高まっているようだ。シリコンバレーのテック業界に特化したオンラインメディアのThe Informationの新しいレポートによると、OpenAIは今年、50億ドルもの損失を被る可能性があり、今後12ヶ月以内に現金準備が枯渇する可能性があるとのことだ。今のレートで言えば年間で約7,500億円という途方も無いものだ。同レポートの分析によると、OpenAIのAIトレーニングとインフラのコストは今年70億ドルに達し、人件費は15億ドルに上る可能性があるとのことだ。

内部の財務データと関係者の情報に基づくこのレポートは、現在800億ドルという高い評価額を持つOpenAIにとって、厳しい状況を示している。もしこの数字が正確であれば、OpenAIは今後1年以内に追加の資金調達を行わなければ、資金が枯渇してしまう。

収入面を考えると、個人ユーザーの課金者数や企業の契約金額についてOpenAIは発表していないので詳細は不明だ。

OpenAIの主な収入源の1つのChatGPT Plusへの月額20ドルの定額制サブスクリプションだ。この有料版のローンチ直後、総売上高は年換算で1億ドルに達していた。これは、1年以上前の数字で、今は増えているにしても桁が違う。

OpenAIは最近、企業向けChatGPTの契約状況について一部情報を公開した。企業向け「ChatGPT Enterprise」で現在までに法人顧客260社と契約しているそうだ。これらの企業で同サービスの利用を登録している従業員は計15万人余りに上るようだ。しかしながら、「ChatGPT Enterprise」からの収益は公表されいない。

発表された数字は、2024年5月時点で年間経常収益(ARR)が34億ドルに達しており、前年比で約580%増加していることだけだ。

それらの数字からみると、AIトレーニングとインフラのコストの70億ドルを捻出するのは大変そうだ。AIトレーニングには人間と機械の両方が関与している。人間が行うファインチューニングは人海戦術だろうから膨大な費用が発生する。機械はOpenAIの開発するAIモデルが使われるが、これも開発費やインフラコストは発生する。しかも、今のハルシネーションの状況を考えると、今後数年以上の長さの開発期間が想定される。

The Informationのレポートによると、最先端のAIモデルの開発と維持に要する天文学的なコストが、OpenAIの財務難の主な原因となっている。これらのシステムのトレーニングに必要な人員やインフラの急速な拡大により、財政的な圧力が高まっているのだ。

ChatGPTは、最も成功したベンチャー企業として広く称賛され、大きな話題を呼んでいるが、OpenAIはこの成功を大きな収益に変えるという難しい課題に直面している。しかも、GoogleやClaude、Perlexityのような競合他社が追いかけ、MetaはAIをオープンソース化して同様のテクノロジーを無料で提供する中で、どのように収益性を達成するのか。

AI業界がバブルとも思えるほど急速に進化する中で、OpenAIのような、多額の開発費用を負担しなけれないけないAI企業のビジネスモデルは厳しい試練に直面することになっている。

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