中国が宇宙ステーションの建設を開始したというニュースを先週見た。来年には建設が完了するようで、独自の宇宙ステーションを持つと言う意味で、アメリカやロシアよりも積極的に宇宙開発に取り組んでいる。
今週、ニュースになったロシアの取り組みは、中国とは少し違っている。ISSで映画の撮影行っていたということだ。女優や監督などが12日間、国際宇宙ステーション、ISSに滞在して「ザ・チャレンジ」と言う、医者が宇宙で宇宙飛行士を救う内容の映画の撮影を行っていた。ロシアは宇宙開発では様々な点でアメリカに先行してきた。今回は、劇場映画の撮影と言うことで、またアメリカに一歩先んじたことになる。
このところ、宇宙と言えば、政府が任命した宇宙飛行士以外の民間人の宇宙旅行が話題になっている。つい最近もスタートレックのキャプテン・カークを演じたウイリアム・シャトナーが、Amazonのブルー・オリジンで宇宙旅行したばかりだ。ヴァージン・グループのヴァージン・ギャラクティックもオーナーのリチャード・ブランソンなどを乗せたロケットで7月に宇宙旅行した。このように宇宙旅行について、たくさんの話題があるが、アメリカのNASAの話を聞かないと思っていたら、久々にNASAの宇宙計画のニュースが出ていた。
NASAの最新の宇宙開発計画は、木星のトロヤ群の研究だった。宇宙ステーションの開発や、宇宙での映画撮影、民間人の宇宙旅行等に比べるとやや地味な計画だ。だが、太陽型の誕生の秘密を探ると言う非常に真面目なテーマだということだ。
木星のトロヤ群と言うのは初めて聞いたが、太陽系の木星と同じ軌道上にたくさんの隕石が存在するそうだ。これは太陽系誕生の際の星の残骸と考えられており、これを研究することにより太陽系の誕生の秘密はわかるかもしれないと言う。
木星のトロヤ群は、遥か彼方の木星と同じ軌道上持っているため地球からは観測が非常に難しい。それで木星軌道までのロケット打ち上げて観測を行うと言う。
はやぶさのように、隕石の標本を採取して戻るのではなく、ロケットに搭載しているカメラなどを使って、高精細の画像を撮影したり、隕石の表面の赤外線を調べたり、太陽の熱に光に当たって熱が上昇したり下降したりする所要時間を調べたりすると言うことだ。
少し華やかさに欠けるようにも思うが、宇宙の秘密を知ると言う意味では重要な計画なのだろう。この計画に使われるロケットはルーシーと名付けられている。ルーシーとは、320万年前の人類の先祖の化石である。この化石の研究により、人類の遥か昔の姿は明らかになった。その当時の人類は1メートルにも満たない、小さな体を持つ生き物で、多くの時間を木の上で過ごしていたと言うことがわかっている。その時代の人類は、地上で生きていくにはあまりにも弱く、猛獣から身を守るために木の上で過ごしていた。
化石のルーシーの話はさておき、ルーシーと名付けられたこのロケットは、小型自動車ほどの大きさで、12年かけて、木星の軌道上の隕石の研究を行う。木星の軌道上にある隕石は100万個程度と推定されており、地球から観測できるのは1万個程度だと言うことだ。ルーシーは、一度木星軌道まで飛び、そこから、一旦軌道の直径を戻って、太陽と地球を周回して、また木星軌道まで戻る。木星は遥か彼方を公転しているために、12年かけて太陽を回っている。つまり木星での1年は地球では12年かかると言うことだ。
一度、木星軌道まで達した後で、太陽と地球を周回して戻ると、最初に観測した隕石群とは、軌道の反対側の隕石群の観察が行えるということのようだ。それで、ルーシーの旅は12年間続く。
このルーシーの記事の中に、NASAの今後の計画が出ており、次は火星の有人飛行かと期待して見てみると、このルーシーの計画のように非常に真面目だが地味な計画ばかりだった。ただし一件だけ目を引いたのは、隕石の軌道を変える実験を行うと言うことが含まれていた。
これは、映画でよく見るように巨大隕石が地球に衝突するようなことが、もし起こったときに、隕石の軌道を変えて、それに対処するための実験だと言うことだ。これについては確かに、地球や人類にとっては、非常に重要な実験だ。火星の有人飛行などよりも先に行ってもらいたいものだ。できれば世界中の国が資金を集めてこのNASAの計画に協力するのは良い。いつか起こるかもしれない災害への、保険のようなものだからだ。