イーロン・マスクの衛星40基が焼失

by Shogo

太陽嵐によって、スペースX社が、今月打ち上げた通信衛星スターリンクの 49基中の40基が大気圏に突入して燃え尽きたと言うことだ。この事故の影響で、スペースX社は1億ドルの損害を被ると言う。

スペースX社は宇宙から高速インターネットサービスを行うために、スターリンクと呼ばれる計画を進めている。すでに2000基近い通信衛星打ち上げてきている。最終的には12,000基の衛星を展開して、地球上のあらゆる場所に高速インターネットサービスを提供すると言う。計画では2020年代中頃までに完成する予定だが、現時点でまだ15%程度の達成率だ。通信衛星自体は安いものだと思われるので、その気になればあっという間に残りを打ち上げられるのだろう。と言っても、40基の消失で1億ドルの損失だから、個人的には安くないが、計画全体から見れば、軽微なのだろうと思う。

しかし、太陽嵐による今回の40基の消失は、それ自体、軽微でも、計画の実現性に黄色信号だろうか。打ち上げられた通信衛星が、そのような形で失われるとは思っていなかった。

この現象の原因は、太陽嵐だ。スターリンクの衛星群は低軌道で地球を周回するために、太陽嵐による影響を大きく受けるそうだ。太陽嵐の影響で地磁気や紫外線が増加すると、大気は膨張して、スターリンクの衛星はより大きな空気抵抗を受けて、さらに密度の高い大気圏に高度を下げて、燃え尽きる。このことを考えるとスターリンクの計画そのものが、そのような低軌道に配置する通信衛星で今後も計画を進めれるのだろうか。

太陽は11年周期で、活発な爆発と安定した状態を繰り返しと言う。活発な時期には、太陽嵐が起きる。次の活発な爆発のピークは2025年と予想されているようだ。今回の太陽嵐による衛星の損害は、ピークではない状態で起こったことを考えると、次は大丈夫かとも思える。専門家は、今回の太陽嵐を中程度の強さとしている。2025年のピークにはどのような被害をスターリンクの衛星に与えるのだろうか。

イーロン・マスクは、宇宙事業に情熱を注いで、火星を植民地化する計画を持っている。スペースエックス社はそのための会社で、すでにNASAやアメリカ国防省もスペースX社のロケットに依存する状況だ。その特徴は、以前NASAが行っていた宇宙開発の時代のロケットの使い捨てではなく、スペースX社のロケットは再利用が可能だと言うことだ。

現在使われているファルコン9の後継機としてスターシップという名前のロケットを開発している。スターシップという名前が、直球で面白い。ともかく、このスターシップは、次世代のロケットで完全に再利用が可能だと言う事だ。これによりさらにロケットの打ち上げのコストが下がる。アポロ計画で使われた有名なサターン5よりも大きく、そのパワーはサターン5の2倍だと言う。これが完成して、地上と宇宙を行き来することになれば、スターリンク衛星の12,000基の衛星の配備は簡単に済むだろう。

だが、今回の太陽嵐の影響で、低軌道の通信衛星が燃え尽きると言うようなことを考えると、スターリンク衛星の配置高度を見直さなければいけないかもしれない。現在の低高度は、他の衛星と競合しないより低い高度で設定されているそうだ。確かに12,000基地の衛星群を考えると、現在使われているような高度は使えないのかもしれない。その問題はこれからスペースエックス社が結論を出すであろう。

高速インターネット計画は、イーロン・マスクの大きな計画からすれば、ごく一部だ。ついでにやっている感じなのだろうか。だが、この衛星による高速インターネット接続サービスは、競合が多い。同様の計画はAmazonにもある。AmazonはKuiper System計画と言う名前で3,236個の衛星を低軌道に打ち上げて、高速インターネット接続をサービスを提供する計画だと言う。

Amazonの計画は創業者のジェフ・ベゾスの個人会社のブルー・オリジンのロケットを使って衛星を打ち上げる。Amazonは独自の接続サービスを世界に張り巡らせて、ECサービスとコンテンツ・サービスを全地球人に提供する計画のようだ。

Amazon以外でも同様のサービスを計画している会社はまだある。OneWebもその一つで既に衛星も打ち上げを開始している。また、Telesatと言う会社もブルーオリジンの衛星を使ってて衛星を打ち上げてインターネットサービスを提供する計画を立てている。

このように衛星を使ったインターネット接続サービスが乱立しているのは、地球全体をカバーすると言うことを考えると、コストは安く競争力があると言うことなのかもしれない。現在の高速インターネットは、モバイルによる接続も含めて地球を全部カバーしているわけではない。それを拡充するコストを考えると、衛星からの電波で接続したほうが安いのかもしれない。素人なのでこの辺の計算はよくわからない。

イーロン・マスクにしてもジェフ・ベゾスにしても宇宙への情熱があるようだ。自らロケットに乗り込んで宇宙を語っている。だが、一方では算盤を弾いて、次世代のインターネットサービスと言うインフラを握る経済的な打算も一方ではあるだろう。

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