日本のGDPがドイツに抜かれて、第4位になるということがニュースになっている。これは驚くことでもなく、円高の影響も多少あるにせよ、長期的には経済成長していない日本がドイツに抜かれるのは時間の問題だった。さらに、2026年にはインドが日本抜いて、日本は5位になることも予想されている。しかし、それより問題なのは、日本の一人当たりGDPは2022年に31位で先進国と言われるような国々のグループからは脱落しつつある。これには様々な要因があるのだろうが、20世紀後半には、世界を席巻した日本の製品がもはや消えたことが例だ。企業は次の製品を作り出すことができず、東芝の例のように解体された企業もある。
一方で、政府も経済政策としては無策だった事も事実だ。韓国は通貨危機の後、経済の軸としてソフト産業に狙いを定め、ソフト産業の育成に投資を行ってきた。結果として、音楽・出版・映像コンテンツなどでいくつもの成功例が出ている。「パラサイト」のような映画や、「イカゲーム」のようなテレビドラマ、BTSを始めとする世界で売れるタレントなどだ。日本も一時はクールジャパンとして日本のアニメなどを売ろうとしたが、どれも成功していない。やろうとしたことが間違っていたのか、やり方がまずかったのか、何の検証もされていないのでよくわからない。
その韓国は、光ファイバーの普及率で世界一だそうだ。2022年12月時点のOECD加盟国で普及率88%と最も高い。日本も光ファイバーの普及率においては84.8%と第2位につけている。韓国や日本のように国土が狭く、人口が一定のエリアに集中しているところは、有利なのかもしれない。スペインが83.1%で3位だが、スペインも広い国土の割には、人口はいくつかの都市に集中しているため、簡単なのだろう。4位はスウェーデンで81.2%だが、スウェーデンの人口密度や分布はよくわからない。5位がフランスの56.7%で、6位のアメリカは20.4%。アメリカのような国は国土が広く人口が分散しているために光ファイバーの敷設は大変なのだろう。しかし、これも発展途上国のリープフロッグのように固定の光ファイバーを敷設するのでなく、イーロン・マスクの衛星インターネット、StarLinkで解決してしまうので、光ファイバーは必要ないと言えば必要ない
光ファイバーの普及率では、日本は2位だが、衛星インターネットの時代になれば、これも、そもそも意味がないと言うことになる。そして、それ以上にそれほど高速インターネットが普及しているのにかかわらず、インターネットの分野で世界で金の稼げるサービスが何も生まれていないところが日本人の残念なところだ。
しかし、これも考えてみれば、世界で使われるサービスは、今のところアメリカか中国からしか生まれていない。英語と中国語と言う世界の使用人口の多い言語をベースにしていることから、様々なアルゴリズムが生まれテストされ、それが世界に普及すると考えられる。だから、日本語でサービスを開発している場合には、1億人に満たない人数にしか対象にできないので、そもそも不利なのだろう。
一人当たりGDPの話に戻るとコロナ前に行ったポルトガルは世界43位で日本より下だが、それでもみんな楽しそうに暮らしていたように見える。ミシュランの星付きのレストランもあれば、路地裏でイワシを焼いて食べるのもおいしい。一人当たりGDPが世界の下位になろうと、一人一人が楽しいと思える生活ができればそれで良いようにも思える。
貧しいが文化的に豊かな国になれるか。これから数十年後には、貧しいが治安が良く、礼儀正しい人が暮らしている国と言われるようになっているのだろうか。