起こったことは常に正しい。

by Shogo

ウイーンへのフライトがキャンセルになり、フランクフルトで5時間も時間をつぶすことになった。おかげで朝の8時について午前中に家に帰って、そばでも食べて夜出かけるまで昼寝と思っていたが、午後3時到着なので、家に帰って風呂に入って、着替えてすぐ出かけなければならない。

この失われた半日以上は大きい。何でこんな空港のラウンジで5時間もいなければいけないのか。プラハでも結局二度もラウンジに行って数時間をつぶした。それでも起こったことは常に正しい。そう思うことにしよう。一人で一週間も旅行して、事故もなく楽しい時間をすごしたのだから、この程度のことはたいしたことではない。

予定外のことが起こると人は興奮する。私もその一人だ。失ったもの、失った時間、損をした気がして怒りっぽくなるのだ。私と同じ飛行機の中国人はグランドアテンダントに中国語でどなっていた。何が問題かも分からないが、すごい勢いだ。怒鳴る必要はないでしょうとたしなめられていた。

私も、便の変更のために20人程度並んでいる列の最前列に行ったら、後ろの列の人たちが怒鳴りだした。マイレージのステイタスで当然の権利だから当然と説明したが収まらない。係員を呼んで説明してもらったら納得したのか静かになった。でも後ろに視線が痛い。フライトがキャンセルだからみんな旅程に影響がでる。一人に5分以上かかっているので、後ろに人は1時間なんてものではない時間をチケットオフィスの前で待たなければならない。割り込みと思われたら怒鳴るのは当たり前だろう。

それに、キャンセルもひどかった。少し遅れて搭乗が始まり、小さな飛行機なのでバスに乗り込んで出発を待っていたら、バスを降ろされてまた待って、それでキャンセル。チェックインした荷物を到着ロビーまで行ってピックアップして、それからチケットオフィスに行けというのだから不満がたまるだろう。誰だってそうだ。失われる時間、予定の変更。到着地での約束。

経験とは失敗につける名前のことだという言葉があるそうだが、キャンセルは自分の失敗ではない。今後に生かせる教訓もない。機材の故障か何かの都合なのだろう。でも起こったことだ。生きているといろいろなことが起こる。うれしいこと、悲しいこと、努力の結果、予期しない結果。起こったことはすべて正しい。最近有名な女史にそんなタイトルの本があるが、ほんとうにそう思う。そう思うようにしようとすることは精神衛生にも良い。がんにかかった人の精神状態は最初が怒りで5段階目は受容だ。途中は忘れた。今度調べてみよう。

ただし、歴史などを考えると人種や言語、宗教が絡むとそうも思えない。今回知ったがチェコとドイツの歴史は日本と韓国に少し似ている。古くは関係が逆で、進んだ農耕などの技術を持ったドイツ人が、ヨーロッパの中心とも言えるチェコのエリアに移住してきた。次第にドイツ系の人が力を持ったようだが、日本の場合は半島から進んだ技術を持つ人が望まれて、あるいは強制的に日本に移住した。ただ、大きな勢力にはならなかった。島国と山の向こうは隣の国や隣の人種という違いもあるかもしれない。日本と朝鮮の場合は19世紀に関係が逆転して日本が朝鮮を併合する。チェコとドイツの場合は、ナチスドイツがチェコを併合する(併合だったかな、形だけの自治という方式だったかな、今は分からない)少し酔ってきたようだ。

プラハの空港についてチェックインを済ませてすっかり帰国モードで朝からビールを飲んでいるので酔っ払い気味。出国手続きが終わると半分帰ったような気になる。撮影済みのフィルムをセキュリティで別にチェックしてもらって小銭でチョコレートを買って、それから午前中だけどビール。それで、ほろ酔いであの騒ぎだから、新しいフライトまでの時間もまた飲んでいた。ラウンジで飲んで飛行機で飲んで、またここでも飲んでいる。

ともかく、第一次大戦後にようやく共和国として独立したチェコはまた独立を失ったのだ。ナチスの統治の時代にドイツの総督府のようなものが、日本の朝鮮総督府のようにあったらしい。ある時、ドイツのチェコ総督がチェコ人に暗殺された。これも日本と朝鮮の歴史と同じ。違うのは、ドイツは暗殺者たちを処刑したばかりか、その暗殺者の出身地の村の男全員も処刑し、女子供は収容所に送ったそうだ。このあたりはユダヤ人抹殺計画のような狂気があるが、理由も関係するかもしれない。

なのでチェコの人はドイツが嫌いかもしれないと思った。今の日本と韓国の関係に似ているのかもしれない。このような場合には起こったことは正しいと言えない。特に韓国とチェコのひとはそう思えない。わだかまりを乗り越えて新しい関係が創れればよいのだが、日本人とドイツ人の言うことではない。

プラハの旧市街の中心にある広場は町の中心だが、ここでヒュンダイのイベントが行われている。ワールドカップスポンサーとしてのプロモーションでかなり盛大なものだ。試合のある時間は巨大なスクリーンで試合が中継され広場は満員だ。昨日炎天下で疲れたので広場のスクリーンが見える場所からビールを飲みながら試合を見ていたのだが、すごい盛り上がりだ。でもイングランドの得点の時のほうが盛り上がったような気がする。ドイツの敵を応援していると単純に考えた。そもそも旅行者が多い場所なので考えすぎだが、チェコとドイツとの関係について詳しい人がいたら聞いてみよう。

関係ないのだが、日本では同じようなパブリックビューイングは規制が厳しいのだが、他の国はゆるいのだろうか。Financial Timesにどこかの金融機関がサッカーのモチーフの広告で、コピーはWorld Cup 2010となっているのだがこれは完全なアウトの広告だ。FIFAは何をしているのだ。莫大なスポンサーシップフィーを払ったクライアントが怒るだろう。

話が脱線に脱線だが、要はまだフライトまで3時間以上もある。それでも起こったことは正しい。酔っ払ってどうでも良いことを書き連ねることも自分には正しい。読んでいる人がもしいたら、申し訳ない。ただの暇つぶしにつき合わせてしまっている。

持ってきた本は読んでしまったので本を探しに行ってこよう。結局、Hope dies last.は見つけられなかった。チェコでももうあまり読まれないのだろう。

ちょうど、フランクフルトのラウンジのテレビではオランダ対スロバキアの試合中、オランダが1点取った。これで言えばチェコの人はどちらを応援するのだろう。

まだ3時間以上。
 

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