銀座のニコンサロンは時間があれば昼や夕方に覗いてみるのだが、このところしばらくチャンスが無かった。最近、たまたま入って見た写真が好みで無かったので、期待せずに「常世の虫」を何の予備知識もなく見た。
不勉強で 原芳市さんという写真家を知らなかったのだが、まずプリントの雰囲気でノックアウト。最近はコントラストを高く焼いているが、やはり柔らかかめなプリントが好きなのだ。それから常世の虫の意味をステイメントで読んでも良くは分からないのだが、虫の写真の間に挟まる自分の影や赤ん坊、老女をみていると、虫に自分の命を見ているような気もしてくる。人間の時間感覚からははるかに短い時間を生きている虫の生と死。それは私たちの生と死でもある。
見ていて、宮沢賢治の「めくらぶどうと虹」を連想した。
—————————————————————————————————————————————–
「この眼(め)の前の、美(うつく)しい丘(おか)や野原(のはら)も、みな一秒(びょう)ずつけずられたりくずれたりしています。けれども、もしも、まことのちからが、これらの中にあらわれるときは、すべてのおとろえるもの、しわむもの、さだめないもの、はかないもの、みなかぎりないいのちです。わたくしでさえ、ただ三秒(びょう)ひらめくときも、半時(はんとき)空にかかるときもいつもおんなじよろこびです」
めくらぶどうと虹 宮沢賢治 青空文庫より引用
——————————————————————————————————————————————
写真集が売られているという表示があったが誰にも聞けなかった。蒼穹舎から出ているようなので、早速久しぶりにギャラリーをみがてら買いに行こうと思ったが、この暑さなのでAmazon経由で蒼穹舎から買えるようなので注文した。新宿御苑周辺のギャラリーは今年前半の出張と旅行のためにすっかり足が遠のいているが、暑さのためにしばらく行く気がしない。