ユニリーバとFIFAが、4年間のスポンサー契約締結を発表した。今年、オーストラリアとニュージーランドで開催されるFIFA Women’s World Cup Australia & New Zealand 2023が対象の最初の大会となる。さらに、2027年までの4年間で、FIFA World Cup 2026 とeスポーツのFIFA eFinalも含まれる。
対象になるブランドは、パーソナルケアのRexona、Dove、Lifebuoy、Luxだそうだ。
この契約のFIFAのスポンサー契約構造での位置付けは、FIFAパートナーなのかと思ったが、FIFAのウェブには、FIFAパートナーとして、アディダス、コカコーラ、ワンダの三社以外に表示がないので、今までのカテゴリーのFIFAパートナーには当たらないようだ。
少なくとも、FIFAワールドカップ2022カタール大会時点では、FIFAのスポンサーは3つの層に構造化されていた。最上位のFIFAパートナー、次位のワールドカップ・スポンサー、最下位のリージョナルサポーターだ。
FIFAパートナーは、ワールドカップだけでなく、FIFAが主催する全ての試合を含み、FIFAロゴの使用権が8年間認められる。ワールドカップ・スポンサーは、ワールドカップだけの権利で、FIFAロゴの使用権は4年だ。期間だけので言えば、ユニリーバは、ワールドカップ・スポンサーなのかもしれない。
カタール大会までのFIFAパートナーは、アディダス、コカコーラ、ワンダ・グループ、現代自動車グループ、カタール航空、カタール・エナジー、VISAであった。
これが今朝、FIFAのウェブページを見ると、多くの会社が抜け落ちて、残っていたのはアディダス、コカコーラ、ワンダ・グループの三社だけだった。長くスポンサーを続けている、現代自動車グループやVISAは表示されていない。これは、いくつか理由が考えられるが、現時点では契約更新の交渉途中だからなのかもしれない。
しかし、いずれにせよユニリーバの契約が発表されて、FIFAパートナーとして記載がないということは、ユニリーバの契約は、FIFAパートナーの契約ではないのだろう。
だから、第二のカテゴリーのワールドカップ・スポンサーと言うことになる。FIFAのリリースによると多くの計画が発表されているために、今までのスポンサー契約のカテゴリーには当てはまらないのかもしれない。ユニリーバとの契約にこぎつけるために、珍しくFIFAは多くの譲歩をしたのかもしれない。
しかし、それにしても、2026年の北米でのFIFAワールドカップを控えてFIFAパートナーが3社と言うのは予想外だ。多くの広告主が北米でのワールドカップを狙って契約をしているものだと思っていた。
最初に考えた通り、現在契約更新の交渉中でまだ表に出ていないだけと言うことも考えられるが、もしFIFAが契約に苦労しているのだとすれば、いくつか理由が考えられる。
まずは、2015年にアメリカ司法省により、多くのFIFAの幹部が起訴されたスキャンダルが影響していること、スポンサー契約の金額があまりにも高額になりすぎと言うこと、インフレや景気後退により、この数年間のマーケティング予算が厳しい状況になっていることなどが考えられる。
この状況で、今回ユニリーバとの契約をできた事は、FIFAにとっては大きな意味がある。ユニリーバは、P&Gと並んで世界最大の広告主であり、メディアやマーケティングにおいては大きな影響力を持つ。そのユニリーバが契約をしたということは、ある意味でスキャンダルの禊は終わったということを意味するからだ。
ユニリーバにとっても、ライバルのP&Gがオリンピックでマーケティング活動を続けていることに対する対応と言う意味もあるのかもしれない。
2015年のスキャンダル後のFIFAは、中東や中国の会社を除いて、FIFAパートナーの契約ができていない状況にあった。ユニリーバはFIFAパートナーではないかもしれないが、それでも最大手の広告主との契約ができた事は、スキャンダルの影響を乗り越えられたということだ。今後は2026年に向けて、FIFAが、FIFAパートナーの数を、カタール大会時点まで回復するかどうかどうか注目だ。