様々な業界で人手不足が問題になっているようだ。このところ、人手不足の記事やニュースが多い。4月の有効求人倍率は3月と同じ1.32倍で求人の方が多く、人手不足が深刻のようだ。日本商工会議所が2022年に実施した調査によれば、中小企業の65%が人手不足と回答したと言うことだ。
厚生労働省のデータによれば、2022年の国内労働人口6,900万人のうち外国籍はわずか180万人に過ぎない。わずか2.6%である。
人手不足が深刻であれば、もう少し外国籍の労働者をの求人を努力をすれば良いかと思うが、雇用者側の、昭和の時代からの外国籍労働者に対する偏見が邪魔するのか、国による規制が邪魔するのか、外国人労働者に対する求人が進んでいないと思われる。それでも、この数年で受入人数は2桁以上のの成長率で増加していることから、人で不足の深刻さが伺い知れる。
さらに現時点で問題になるのは、円安のために外国人労働者にとって日本は魅力的な国ではなくなっていることもあるかもしれない。多くの外国人労働者に門戸を開いたところで、どの程度の労働者が日本に来てくれるのか疑問だ。
日本の今後にとって問題なのは、日本で働いている外国籍労働者の43%は製造業とサービス業で働いており、知的能力の高い労働者にとって、日本は魅力的な仕事や賃金は得られないようだ。
厚労省のデータによれば、国別の外国籍労働者の出身地は、1位がベトナムの25.4%、 2位が中国の21.2%、3位がフィリピンの11.3%、4位がブラジルの7.4%、5位がネパールの6.5%と続く。ベトナム、中国、フィリピンの、アジアの近隣諸国で6割近くを占めている。
4位の7.4%のブラジルに関しては、地球の裏側からの来日だ。これに関しては昭和の時代から日系人に対して労働ビザを発給してきたことが理由となっているものと思われる。つまり、人と言うのは簡単には知らない国に行って働きたいと思わない。友人、知人などの経験者の話から、その国に働きに行ってみようと言うことになるのだと思われる。つまりいきなり働きに行きませんかは難しく、時間がかかることだ。ブラジルはその例だ。移民した日系人が多いと言うこともあるが、時間をかけて日本に働きに行くことが一般化したためと思われる。
日本では。歴史的に外国人労働者に対する警戒心が強く、雇用者側の心理的な面や国の政策によって外国人労働者が制限されてきた。しかし数年前から熟練労働者の永住許可取得を容易にした政策がとられたこともあり、急速に外国人労働者は増えている。もし本当に人手不足が問題なのであれば、この熟練労働者の永住許可の政策を、さらに広げるべきなのである。円安がどの程度続くかわからないが、円安や地政学的な脅威から製造業の国内回帰が進むのであれば国内の労働者はさらに不足する。
また、今後の日本の成長戦略を考えたときに製造業やサービス業だけではなく、高度な知的労働者の日本での就労や起業をさらに促進する必要もあるだろう。
しかしながら、労働者不足の解消として、永住許可の促進を行うと、今後、何世代にも立って様々な問題も発生することもあり、慎重に対応する必要がある。これは人手不足解消のために、移民政策に頼った諸外国の事例を見てもよくわかる。人間は機械ではないので、来日する人の文化や宗教への配慮も含めて、どのように受け入れられるかを考えた上で対応を検討すべきであろう。突き詰めれば、単一民族を謳ってきた日本が多民族国家になるということが、現時点の日本人が受けられるかどうかと言うことになる。
いきなり移民の問題まで議論を始めると、人手不足が解決しないので、その問題も念頭に置いて、外国籍労働者の永住許可を与える枠をどこまで拡大するのかを考えるのが現実的かもしれない。現状の2.6%をどこまで拡大するのか。そのような現実的な議論が必要なのかもしれない。