バーチャル博物館

by Shogo

大阪関西万博の遅れのことが話題になっている。しかし、遅れが問題ではなく、万博そのものが、もはや時代遅れになっていることの表れのような気がする。

ネットで何でもできる時代になっても、物理的・現実空間的に何かを体験すること自体の意味は大きい。実物を身近で見たり、体験することにより、質感、重み、臭い、手触りなど感覚的な事はネットでは伝わらない。

しかし、費用はもちろんアクセスの問題も含めて課題が多い。だから、莫大な費用を土木工事・建設をかけるよりも、バーチャルでの万博で、デジタル技術の開発やツール・インフラの整備などに予算を投下する方が、今後のデジタル化社会のためにも良い。

それで、公共施設のバーチャル化のことを調べていたら、大英博物館のバーチャルツアーに行き着いた。ウエブで公開されている大英博物館のバーチャルツアーは、3Dで博物館の中を歩きまわり、展示されている美術品や遺物を3Dで見えるようになっている。相当の予算が投入されたと思われる作りで、これと同じことを日本の東京国立博物館などでも実現すべきと考えた。だが、デジタル化の技術や予算のことを考えるとまだまだ先になるだろう。

このバーチャルツアーを見て考えたのは、話題になっている遺物や美術品の返還の問題だ。植民地時代に、多くの西洋諸国が、主にアフリカやアジアから無数の遺物や美術品を持ち去って、それぞれの国の美術館・博物館に展示をしている。

それを、私たち世界中の人たちが見に行くわけだ。そして、見るのは、その国の歴史や伝統や文化だけを見るわけではない。彼らが、よその国から奪ってきた盗品を見るわけだ。時に、大英博物館は泥棒博物館と呼ばれることもある。ほとんどの展示品は、世界の国々から買い取ったものもあるが、悪い場合には盗んできたのだ。

植民地時代に、西洋諸国は、世界の多くの国を侵略し、自国の領土として吸収するだけではなく、植民地となった国の文化的・歴史的遺物を持ち去った。その結果、多くの国が自国の文化や歴史を象徴する重要なアイテムを失っている。あの時代だけに許された人種偏見と戦争の遺産だ。

この略奪された歴史的・文化的遺産の返還を求める声は、世界各地で起こっている。この流れを加速させたのは、フランスのマクロン大統領である。2017年にマクロン大統領は、アフリカのブルキナファソでの演説で、フランスの博物館にあるアフリカの歴史的いぶ物を返還すると約束した。これをきっかけとして、ヨーロッパの他の諸国も、所有する他国の歴史的・文化的遺物を返還するためのガイドラインを設定し始めた。そして、2022年にドイツは1,000点のベニン青銅器の所有権をナイジェリアに譲渡している。

そこで、博物館や美術館のバーチャル化が役に立つと思われる。通常、著作権の切れている美術品は所蔵する博物館が複製権を持つ。今後、返還される美術品や歴史的遺物については、今まで展示されていた博物館に対して、複製権を認め、バーチャル化を行うことを許可することができれば、返還がスムーズに進む気がする。また、予算が少ないであろう旧植民地の博物館・美術館も、そのバーチャル化された返還品のサイトが利用できるので、両方にメリットがある。

これと同じで万博も、すべてバーチャル化で行うことが良い気がするが、今回の万博はすでに契約済で今からでは無理なのだろう。

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