Rapidusの最先端AI半導体

by Shogo

台湾のTSMCの半導体製造工場が熊本県に設立されたニュースが大きな話題となった。熊本にこのような工場ができるのは喜ばしいことだが、一方で残念な気持ちにもなった。かつて日本は世界各国に生産工場を設立し製品の製造を行って、日本で研究開発が行われていた。21世紀に入ってそれが逆転したと言うことだ。

今朝のニュースでは、最先端のAI半導体をアメリカのベンチャーと共同して開発すると言うニュースもあった。聞いたこともないRapidusと言う会社は、2022年設立された新しい会社だ。Wikipediaによると以下の通りだ。

Rapidus株式会社は、2022年8月10日、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社及び創業個人株主12名が総額73億円を出資し、先端半導体の国産化に向けて設立された。

Wikipedia

最先端のAI半導体の国産化を目指すために、日本政府も450億円の支援を決めているようだ。残念ながら自力では無理のようで、AppleやTeslaの元従業員が設立したスタートアップ企業「テンストレントホールディングス」と協業する。テンストレントホールディングスが、AI半導体の開発を行い、Rapidusが製造を担当する。つまり、TMSCと同じ構図だ。

AI半導体は、現時点で最も重要な技術と考えられており、それはNvidiaの株価を見ればよくわかる。AIがブームになって以降、AI半導体の需要はますます高まっており、Nvidiaはトップの企業だ。もともとはゲームに使われるGPU(グラフィックス処理ユニット)開発企業であったが、GPUが、生成AIやディープラーニングのためのデータセンターの需要が高まっているために需要が拡大している。

ゲーム用のGPUが、ディープラーニングで、なぜ重要なのかは理解できない。ともかく、ディープラーニングでは、大量のデータを処理し、複雑な数学的計算を行う必要があるからだそうだ。これらの計算は並列処理に適しており、GPUはそのような並列処理に特化しているという理由という。ゲームで高速で画像を描画するために、そのような並列処理を行うということなのだろう。

しかし、それにしても、台湾の半導体会社の製造工場が設立されたり、日本の企業も半導体の開発にアメリカのスタートアップと協力しなければいけない状況と言うのも残念な話だ。

かつて世界を席巻した日本の半導体産業は、近年その地位を低下させ、見る影もない。Rapidusの先端AI半導体のプロジェクトが、単なる技術開発にとどまらず、日本の半導体産業の競争力強化、AI技術の発展、そして日本の経済成長にも大きく貢献することを期待する。成功すれば、日本は再び半導体産業の中心として大きな地位を占めるようになり、その先には開発まで行える技術力もついてくるかもしれない。

なぜ日本の半導体産業は没落したのだろうか。これには、これまでに多く分析がされている。

まず、半導体産業各社の経営戦略の誤りだ。1980年代後半には、日本の半導体産業は世界トップシェアを誇っていた。しかし、バブル崩壊後の経済停滞の中で、多くの企業は設備投資を抑制し、海外への生産拠点移転を進めた。 その結果、最先端技術の開発競争から取り残され、韓国や台湾などの後発企業に追い抜かれてしまったと言われている。

そして、技術革新への対応の遅れだ。半導体製造技術は急速に進歩し、微細化や高機能化が進んでいたが、日本企業はこれらの技術革新への対応が遅れ、サムスン電子やTSMCなどの海外企業に技術面で大きく差をつけられてしまったと分析されている。これもバブル後の恐怖症で投資をしなかったからだろうか。

それと、重要なのは政府の支援不足だった。アメリカや韓国などは、自国の半導体産業を保護・育成するために、積極的な政府支援を行ってきた。それは、半導体産業が自国の経済成長の中心になると認識していたからだ。一方、日本政府は半導体産業への支援が十分とは言えず、国際競争力を高めるための政策がなかった。政府の無策の結果という見方もある。

最後に日本社会の構造的な問題もある。リスクを取らない企業文化や大学や研究機関との連携が弱かったり、ベンチャー企業の育成が進んでいなかったりといった問題だ。

これらの要因のために、日本の半導体産業はかつての栄光を失い、現在では世界シェア10%程度まで落ち込んでいる。かつての地位を取り戻すには、技術開発の加速、人材育成、政府支援の強化など、多くの課題を克服する必要がある。Rapidusに政府支援を行っているようだが、このような事例が数多くないと、日本の未来はない。これからは、技術力開発のために、さらに産学官が一体となって取り組んでいくことが重要だろう。

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