2028年のロサンゼルス夏季オリンピックが、NFLのラムズとチャージャーズのホームスタジアムのSoFiスタジアムを水泳競技の会場として選んだという見出しで興味を持って読んでみた。SoFiスタジアムの収容人数は通常のオリンピック水泳競技会場の倍となる3万8千席だ。これは、新規会場の建設を行わわないことや、人気の水泳競技のチケット販売も拡大を目指すなど、東京オリンピックと違ったコスト意識の違いに改めて感心した。
2028年ロサンゼルス夏季オリンピック委員会、LA28は、2028年大会を最も規模の大きいスポーツプログラムとして位置づけ、過去最多のチケット販売を目指している。つまり、東京オリンピックのような国を挙げてのお祭りではなく、ビジネスとして捉えているということだ。その方針で既存のアメリカンフットボールスタジアムを水泳会場に使うという発想なのだろう。東京で言えば、東京ドームを水泳会場にするということだ。会場も大きくなってチケット販売も増えて、東京アクアティクスセンターに投じられた567億円が節約できるということだ。
オリンピックの開催には多額の公的資金が必要であり、しばしば巨額のコストが発生する。東京オリンピック2020の場合には国・東京都からの支出は1兆6900億円と発表されていた。
しかし、LA28は直接の公的資金を受けず、$69億の予算を民間資金とスポンサーから調達する計画だという。これは、1984年にオリンピックを開催した際と同様のビジネス構造だ。1984年大会は民間資金だけで実施され、約2億5千万ドルの利益を上げた。
LA28は、できる限り既存のスタジアムやアリーナを活用し、新たな恒久施設の建設を最小限に抑える方針を打ち出している。例えば、以下のような会場変更が行われる。
- 水泳:SoFiスタジアム(ラムズ、チャージャーズのNFL本拠地)に38,000席の仮設プールを設置
- 体操:Crypto.comアリーナ(レイカーズ、キングス、スパークスの本拠地)
- バスケットボール:Intuit ドーム(クリッパーズの新アリーナ)
一方、陸上競技はロサンゼルス・メモリアル・コロシアムで開催され、1932年、1984年、2028年と3度目のオリンピック会場となる。
SoFiスタジアムへの会場変更により、仮設施設の建設・運営コストを削減しつつ、大規模会場でのチケット販売収入増が見込まれている。LA28は、これらの施策で1億5000万ドル以上のコスト削減と新たな収入を達成できると試算しているそうだ。
LA28は、2028年大会のチケット収入は約12億ドルを見込んでおり、そのうち5600万ドルが水泳競技からの予想だそうだ。SoFiスタジアムでの開催は、これを大幅に増加させる可能性がある。また、開会式のために競技とウォームアッププールをカバーする必要があり、会場を水泳競技場に戻すのに数日を要するという。これにより、通常は第1週に行われるはずの競技が第2週に移動し、逆に陸上競技が第1週に開催される。
このような記事を読むと1兆6900億円の公的資金が使われ、しかも新設施設の維持管理費にまた費用がかかる東京との違いに絶望的な気分だ。東京アクアティクスセンターだけの年間赤字は年間6.4億円の赤字だそうだ。NHKの報道によれば、他の新設施設も含めての年間赤字額は31億円だ。LA28は、できるだけ既存の施設を使いチケット販売の拡大を図っている。通常のビジネスなら当たり前だが、東京ではそうでなかった。
LA28の運営方針やビジネスモデルを読むとた彼我の大きな違いに驚くより悲しくなる。これが、日本の凋落といわれる根本的な理由だろう。