紙幣デザインと女性差別

by Shogo

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の発言が問題になり、辞任されるそうだ。確かに内容的にいって女性蔑視発言であることは間違いない。それ以前に、女性だからと枠をはめて、女性について発言するのは、その段階でまずい。

発言の内容を全体的に見れば、文科省の女性理事の枠を設定することに対する問題意識があるのだろうが、それも女性の社会進出を進めるための過渡的な制度であると認めることが必要だと個人的には思う。女性の経営者や政治家が少ない現状を考えると、女性だからと差別する風潮が根強くあることも事実なので、制度を作って強制的に進めると言うことも1つの方法だ。そういう意味で文科省が枠を作ると言う事には賛成する。

今回の出来事は、女性差別の問題について考える良い機会になっている。ただ、今回だけでなく、メディアの取り上げ方にも問題があると思う。森会長の、スポーツに対する功績も含めて報道すべきと思うが、その点が残念だ。

そんな中で、ニューヨーク・タイムズで見かけた記事によれば、2016年にオバマ政権が決定した、ハリエット・タブマンの肖像画を使用する20ドル紙幣のデザインの変更が進んでいないらしい。2020年に新しいデザインが完成する予定だったが、トランプ政権ではこれが止まっていた。トランプ前大統領自身は、現在の20ドル札のアンドリュー・ジャクソンを変えたくなかったと言うことだ。アンドリュー・ジャクソンは、トランプ前大統領と同じようにポピュリストとして知られる政治家なので、親しみを感じていたのかもしれない。ポピュリストは、大衆迎合主義者なので、大衆の半分である女性に受け入れられることは重要のような気がするが、単に女性差別主義者だと言うことだろう。

また、20ドル札は最もよく使われる紙幣で、通称をジャクソンというくらいに、生活に馴染みがあるので、変えるのが嫌だったのかもしれない。人間は、基本的には新しいことは嫌いだ。

現時点で、ハリエット・タブマンのデザインを再び進めようとしているのは、主に民主党の議員で、バイデン大統領も同様に計画を進めるように指示をしている。しかし共和党の多くは反対しているようだ。

ハリエット・タブマンは、19世紀から20世紀にかけての奴隷解放運動家、女性解放運動家であった。奴隷の身分から出発して、多くのことを成し遂げた偉人である。亡くなったのは1913年なので、まだ100年と少しの前の人だ。現時点まで、ハリエット・タブマンが紙幣の候補に選ばれただけで、アメリカの紙幣には女性の肖像画は描かれていない。

都市伝説かもしれないが、紙幣の偽造のためには、髭を生やした男性が望ましいと聞いてきた。表現が複雑になり偽造防止に役立つからだ。しかし、女性が使われてこなかったのは、それだけの理由でもないだろう。

日本では、1881年に紙幣が改定された際に、神功皇后の肖像画が描かれた。神功皇后は、神話の登場人物で、第14代天皇・仲哀天皇の皇后とされている。この時点でどうして、この神功皇后が選ばれたのか理由はよく知らない。

神功皇后は架空の人物なので、例外としても、2004年に登場した5000円札は樋口一応となっている。これが日本で現時点までには発行された唯一の、実在した女性の肖像画である。この5000円札は、2024年には新しいデザインに変更され、その時点で肖像画は津田梅子に変わる。20年を経ての変更は、偽造防止のためと思われるが、その際の肖像画変更も偽造防止のためなのだろう。

5000円札に樋口一葉が選ばれた時点で、5000円札が女性の指定席になったと言うことか。デザイン変更と言って、男性のデザインに肖像画に変更すれば、時代に逆行すると言われることは間違いない。

アメリカのハリエット・タブマンのデザインが、このまま進行して2024年に登場するとすれば、それでも紙幣に関しては2004年の樋口一葉から20年遅れての登場と言うことになる。もちろん、それは紙幣だけのことであり、アメリカでは女性の社会進出は日本以上に進んでいる。と言うより、もはや多くの場合は男女の区別がないと考えてよい。

差別とは、一人一人の心理の問題だ。だから、今回の騒ぎから、私達がこの問題を考えて、男女差別の無くすことにつながれば良い。

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