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貴州の旅行はすでに広西チワン族自治区に入っている。朝の散歩を終えてホテルに戻ってすぐに出発だった。朝から小雨が降り続いていたが、バスは山道を縫って走る。山や谷が、桂林がそう遠くないことをうかがわせる景色になってきた。
ほんの1時間ほどで龍勝龍脊棚田景区に到着する。バスから降りて棚田の方向に歩きだすが、相変わらず雨は降り続いている。その小雨の中を山を登り始める。辺りに観光客はほとんどいない。
この場所は、このツアーではハイライトのひとつ、あるいは最も重要な景勝地とも言える場所だった。Dragon backbone terraceあるいは龍背棚田と呼ばれる棚田の風景は、この景勝の地でも知られた存在だ。龍が伏せっているように見える棚田ということで、棚田の畝が龍の骨に見立てられている。
しかし、この日はあまりに天気が悪い。雨と霧だ。バスを降りた地点から最高地点まで濡れた細い道を500mの高さを登らなければ行けない。距離では5kmといったところだろうか。
同行のメンバーは、ふもと近くの集落のカフェや竹の筒に入ったトウモロコシでリタイアしてしまい、私と、前に雲南省に一緒に行ったドイツ人だけになり、それも集落をいくつか過ぎ写真を撮ったりしている間に逸れてしまった。雨と霧で前があまり見えない道に人影が現れたで後を追いかけると、農作業に向かう少女のようであった。
いくつか集落を過ぎる。一軒一軒の家は大きく、道は細い。少女はこんな雨の日にどこに行くのだろうと考えながら後をついて行くと、そのうちに霧の中に消えた。