M3シングルストロークの具合がこの間から悪い。修理をお願いすることにして、いつも行くスキヤカメラ修理部にしようかと考えていたら、ウメハラ・カメラ・サービスを知人に勧められた。 スキヤカメラは場所も便利で、不満があったことはないのだが、ウメハラ・カメラ・サービスもすごく丁寧で価格もリーズナブルと勧められたのだ。それで、外出したついでに、東京ドームのそばのそこに行くことにした。
駅は春日で、地下鉄の駅の出口のすぐそばのマンションの一室がウメハラ・カメラ・サービスだった。9階までエレベータであがると、外に面した廊下から外がよく見えた。
部屋のベルを押すと内側からドアが開いて中に通される。会社というよりは誰かの家を訪ねた感じだ。応接に案内されて、早速、症状の説明。丁寧に今後予想される作業の説明をしていただく、合わせてその作業の見積も同時に示される。分解前にはどこまでの作業が必要か分からないので見積の総額は決まらないが、一応の上限を決めてそれを超えるような場合には電話をいただくこととする。作業は1カ月と少しかかるらしいが、今回は正月を挟むのでそれ以上で、出来上がりは2月だそうだ。引き換え書に連絡先など記入して失礼する。合計で30分ほどの滞在だった。
今年を考えてみると、昨年の秋から6×6スクエアの写真を封印して、35mmに集中して写真を撮った。数えていないが多分100本以上撮ったはずだ。めったに使わないNikon F3とF100は別にして、M3シングルストローク、M3ダブルストローク、M6,CLの4台で100本を回したことになるが、M6とCLは出動回数が少ないので、M3シングルストローク、M3ダブルストロークで80本くらい撮影した感じだろうか。
どちらも酷使されてきたという感じの個体ではないが、なにせ50年以上も前に作られたカメラだ。酷使されていないにせよ、どのように保管されていたのかもわからない。それが何十本ものフィルを通したのだから不具合が出るのかもしれない。M3ダブルストロークは今のところ問題がないが、こちらはもっと古くて55年ほど前のカメラだ。この調子で使うと近いうちに不具合が発生するのだろう。むしろ道具というのはある程度使っている方が故障は少ないというが、でもある一定期間に手入れも必要なのは当たり前だ。縁あって私の手元に来たのだから、フィルムがまだある間は手入れもして丁寧に使い続けていきたいと思う。
フィルムが一般的に使われなくなった現在までは、このようなカメラは高価なものだったが、フィルムカメラの中古価格はかなりの勢いで低下している。だれもフィルムの写真に見むきもしなくなったからだ。なのでかつては高価なそれを自由に使って行けるのは、デジタルとフィルムの写真の狭間で生きる私たちの特権だろう。
かつては高価すぎて、プロを除いて一般的には日常生活で激しく使うというよりは、大切に保管されて時々、大事に使われたのだろうと思う。それが証拠に私が中古で手に入れたカメラはどれも美しくて細かな傷があっても大きいものは全くなかった。むしろ私が使い始めてから、かばんの中で傷がついたり、黒のペイントの角が薄くなってきている。ほんのしばらくの通常の使用でペイントが薄くなるということは、つまりそれ以前はほとんど使用されていなかったという証拠だ。
カラーの写真は撮らないのでフィルムがある限りは、自分で現像してプリントすればよいのでいつまでも写真を続けていける。問題はフィルムがいつまであるかだ。コダックの運命はすでに尽きようとしている今、5年先か20年先か、どこかでフィルムが無くなる。その前には大量生産ではなく、小規模の生産で価格が急騰するのだろう。一本いくらなら使い続けるだろうか。1000円だったら今のようには使えない。ともかく、その日が来るまで手持ちの機材を使って撮ってゆく。同じような仲間がたくさんいるから、まだまだ大丈夫だと思う。多分、まだしばらくは。だからM3シングルストロークの留守中は、他の機材を十分に使ってあげる予定だ。