50年前には少子高齢化と言う言葉はなかった。むしろ、人口増に対して産児制限の考え方が一般的に広まっていたと思われる。それが変わったのは1990年の出生率の大幅な低下だったそうだ。つまり、この頃から、社会も政府も少子化の問題については認識していた。だが、有効の有効な対策をうたないまま30年以上経過したと言うことになる。
90年代前半当時に、フランスに勤務していた同僚は、3人目の子供が生まれて、政府からの様々な資金提供で儲かっていると言う話を聞いたことがある。フランスは、子育て家族への経済支援に加えて、社会全体が事実婚など、子供を産み育てる環境整えたことが奏功して、出生率が改善してきたきたと言われている。翻って日本は、あまり有効な対策はとられてこなかった結果が、さらなる出生率の低下だ。
子供を増やす方法は2種類ある。子供が生まれる数を増やすか、子供を産み育てる親を増やすかだ。
親を増やす方は、移民を増やすと言うことになる。これについては、アメリカでは人口増に大きな効果をもたらしている。しかし、その反面、社会的には様々な問題をもたらすことも事実だ。この政策については十分な議論を尽くして決定をしなければいけないであろう。
生まれる子供を増やすのは、もう少し簡単な話で経済的な支援に加えて、子供を産み育てる環境を十分に整えることで解決できる部分もある。これは、経済的に支出増で解決できる。これを実行してこなかった政府の無策は、今の少子高齢化の問題を招いたとも言える。
国連の発表をしている65歳以上の人口比率による高齢化率によれば、日本は、モナコの36.2%に次いで、29.8%の第2位にある。3位はセントヘレナの26.7%、4位はイタリアの23.7%、5位はフィンランドの22.9%。
モナコやセントヘレナのような、極小国と比べれば、日本はある程度の人口を持つ国として、最も高齢化が進んだ国だ。世界の人口の高齢化率の9.6%と比べれば、その深刻さがよく分かる。しかも、この数字は、今後も確実に増加することが見込まれている。人口の多い団塊の世代がこの世を去るまで、日本の現役世代は様々な負担に加え、大きな問題に直面することになる。
少子高齢化と言うあまり明るくない話題で、国の将来に不安を覚える。ちょうど、投資銀行のNatixis発表している「老後を過ごすのに最適の国のランキング」で、日本は調査対象44カ国中22位と発表された。このランキングで、1 位はノルウェー、2 位スイス、3位アイスランド、4位アイルランド、5位オーストラリアとなっている。
この評価は、各国の様々な側面を評価して総合的にランキングされている。評価項目は、医療、物質的充実、引退後の財政、介護、不良債権、インフレーション、金利、税金、政府債務、治安などを含む社会統治9項目である。
日本は医療、インフレ、統治、物質的豊かさなどについては評価が高いものの、政府債務、介護、税金、金利についての評価が低く、全体的には22位となっている。
日本が、このランキングでアメリカ(18位)やイギリス(19位)に比べて低い位置にいるのはどうも理解できない。だが、すでに10年以上にわたって、同様の方法で評価されているので、一般的には合意されていることなのだろう。ちなみに日本は2012年には25位だった。それが少し順位を上げたとも言える。実際に政府負債、介護の問題など強化を必要とする点があるのも事実だ。
今後の超高齢化社会を考えると、このランキングの評価項目のそれぞれについて、さらに状況が悪化することが考えられる。そうなると、今は調査対象44カ国中22位だがこの順位はますます下がっていく。残念なことだがそれは事実であり、日本の社会の実態を反映しているとも言える。