大谷翔平がメジャーリーグの試合で「3本塁打・10奪三振」を同時に記録し、チームをワールドシリーズ進出に導いたという歴史的・驚異的出来事は、日本はもとよりアメリカでも大きな話題になった。それは、まだ続いているし今後も忘れられることはないだろう。ワールドシリーズも楽しみだ。
それに触発されて、NYTが「偉大な個人パフォーマンス」という記事を載せていた。取り上げられていたのは、以下の7つのイベントだ。
- ディエゴ・マラドーナ(1986年W杯 準決勝 vsベルギー) 2得点を決め、神がかったドリブルで相手を翻弄。
- リオネル・メッシ&キリアン・エムバペ(2022年W杯決勝) 両者が互いにチームを背負い、メッシが最終的に優勝。
- マルタ(2007年女子W杯準決勝 vsアメリカ) 美しい2得点で米国の無敗記録を止めた伝説の試合。
- トム・ブレイディ(2015年スーパーボウル) 第4Qで逆転勝利を導いた冷静なプレー。
- ウサイン・ボルト(2009年ベルリン世界陸上) 9.58秒の100m世界記録を樹立。
- リース・ウォルシュ(2025年ラグビーリーグ決勝) 3トライを演出し守備でも決定的な貢献。
- ベン・ストークス(2019年アッシュズ第3戦) 絶望的状況から一人で試合をひっくり返した。
いずれも、「個人の限界を超えた瞬間」として、大谷翔平の快挙に匹敵するとして取り上げていた。いくつかは全く知らない話だった。アメリカ人から見ての偉大な瞬間だからだろう。だから、同じように日本人として、かつ個人的に、大谷翔平を除いて、日本人アスリートの偉大な瞬間を考えてみた。
イチロー(2004年、MLBシーズン安打記録 262本)
シーズンを通じて262安打という大リーグ記録を樹立。これまでのジョージ・シスラー(1920年の257安打)を84年ぶりに更新しました。打率.372、出塁率.414。試合ごとに安打を積み重ねる「継続の天才」として、数字以上に職人芸として評価され、MLB全体に「小さな巨人」という新たな価値観をもたらした。
野茂英雄(1995年、MLB新人王/ノーヒッター2度)
メジャー移籍初年度に奪三振王・新人王を獲得。アジア出身投手の扉を開いた功績は計り知れない。イチローも野球殿堂入りのスピーチの中でも野茂に感謝していた。1996年にはロッキーズを相手にノーヒットノーラン、2001年にはボストン・レッドソックスでも達成。両リーグでノーヒッターを記録した史上4人目という快挙。それぞれの記録に偉大な瞬間があった。
浅田真央(2010年バンクーバー五輪 フィギュアスケート)
トリプルアクセル3本成功という前人未到の挑戦。銀メダルに終わったものの、女子フィギュアの技術限界を塗り替えた。勝者ではなくても偉大であることを証明した代表的な例だ。演技後の涙は日本中に感動を呼んだ。
澤穂希(2011年女子W杯 決勝 vsアメリカ)
延長後半、1-2で迎えた絶望的な局面で同点ゴールを決め、PK戦の末に世界一。大会MVPと得点王を同時受賞した史上初の選手。これは、日本サッカー史の頂点だろう。
羽生結弦(2018年平昌五輪 男子フィギュア連覇)
右足の怪我を押しての出場ながら、完璧な演技で五輪二連覇。日本人として66年ぶりの偉業。美しさと精神力の融合として世界的に称賛された。
高橋尚子(女子マラソン、2000年五輪金・2001年世界記録)
シドニー五輪で日本女子初の五輪陸上金(マラソン)かつ当時の五輪記録を樹立し、国民的な賞賛を得た。翌2001年ベルリンで女子初の2時間20分切り(2:19:46)世界記録を樹立し、マラソンの記録を押し上げた。
このうち高橋尚子のベルリンでの世界記録は目の前で見た。たまたま、ミュンヘンに出張していたが、用事が済んだ後でベルリンに移動。コース途中で彼女の走りを見て、その後ゴールまで行って世界記録達成の瞬間を見ることができた。
このような「偉大な瞬間」は個人的な印象だから人によっては当然異論があるだろう。
