ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」展

by Shogo

大学ゼミの同期会が予想よりも早く終わったので、まっすぐ帰らず、高田馬場から御茶ノ水に向かう。時々行く、御茶ノ水の写真ギャラリー、gallery bauhausに寄ろうと思ったのだ。途中でウェブサイトを見ると、「LIFE 写真のある生活 Ⅲ」と言う展示をやっていることがわかった。

Bauhausでは、誰でも名前を知っているような有名な写真家のオリジナルプリントを見ることができるので、時間があるときには寄ってみる。それらの作品を買うこともできるのだが、欲しいものは高くて手が出ない。では、安ければ買うかというと、まだgallery bauhausではプリントを買ったことがない。見るだけで、こちらだけが得をしていることになり、申し訳ない気持ちになる。

ウエブサイトで見落としていたが、今回は有料の展示だった。入り口で800円を払ってギャラリーに入る。しかし800円払っても十分にお釣りがくるほどの有名写真家のオリジナルプリントを見ることができた。だから、もっと有料の展示も行って良いと思う。

横木安良夫先生のカラー写真もあったが、多くはモノクロのプリントだ。モノクロプリントの教科書を見るように多くの作品が並ぶ。名前を挙げるとキリがないが、奈良原一高、杉本博司、石元泰博など。海外の作家では、アウグスト・ザンダー、イリナ・イオネスコ、エドワード・ウエストン、ハリー・キャラハン、ユージン・スミス、ヨゼフ・スデク、ロバート・フランク、ロベール・ドアノーなど巨匠の作品が並ぶ。多分、昨日現在では東京のどの場所よりも写真濃度が高い場所だったに違いない。

gallery bauhausで写真に堪能して御茶ノ水からそのまま中央線で帰ることもできたが、それでも早い時間だったので、気になっていたティルマンスの展示を見ることにした。お茶の水から表参道という、地下鉄1本で少しだけ遠回りだったからだ。

会場はルイ・ヴィトン。ルイ・ヴィトンの店は、何度も前を通っているが入ったことはない。縁のない場所だ。ルイ・ヴィトンの店に入るのは、何十年も前に付き合いでパリの店に入って以来のことだ。

店に入ると数人の黒服の店員に取り囲まれた。写真の展示を見たいと言うと、会場の7階への直通エレベーターの場所に案内される。7階に上がると高い天井のギャラリーがあった。ティルマンスらしい展示方法で大小様々なプリントが、また様々な方法で壁に飾られている。

入って直ぐに目に入る、大きなルピナスの花の写真は、ちょうど家でもルピナスが咲いているところだったので、そのプリントの大きさもあり、インパクトを感じた。サイズが大きいこともあるが、2本並んだルピナスの花の、白い花と紫の花の対比が印象的だ。その2本の花の隣の既に盛りを過ぎた花が時間を感じさせる。背景の港が、我が家のルピナスとは違う雰囲気を出している。

しかし、何よりも印象的なのはやはり明るい光に照らされた写真全体の印象だ。ルピナスともう1枚、緑の植物の葉が白い建物を背景にして撮られた作品も明るい光が写されている。この2枚が非常に印象的で、それ以外のティルマンスのスタジオや滞在先のホテルなのか、室内で撮られた写真と並ぶとより明るく感じる。全体的にはスタジオを含めた室内での日常生活を感じさせる写真が多かった。

bauhausで非常に緊張感の高い写真を見た後なので、、全体的には、ゆったりとした、何気ない日常の写真に見える。しかし、その中に突然、緊張感が感じられる。それは人物の後頭部を撮った写真や靴を履いた姿を撮った写真など、人物をクローズアップして撮られた作品で、全体の構成の中で特別の意味を持たせているように感じる。

20点以上の作品が展示された会場はティルマンスの展示としては充実したものだ。ただし、残念なのは作品保護のためなのか会場が少し暗いこと。もう少し明るい環境で見たかった。

そう言えば、ゼミ会の来年の冬の会は、広島でということになった。一泊か二泊で予定を考え始めよう。1年などあっという間だ。

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