MLBが開幕して、今年から導入されたルールのピッチクロックが大きな話題になっている。大谷翔平が初めてピッチクロックのエラーをしたことも報道されていた。ピッチクロックの導入は、大きな効果を上げていて、試合時間の短縮に貢献しているようだ。開幕以来、20分から30分程度の試合時間が短縮された。
MLBの試合時間は、1985年には平均2時間44分だったものが、2021年には3 時間11分まで伸びていた。そのために試合が深夜までずれこみ、子供が試合を見られないことが度々起こった。実際にテレビの視聴者数は減少しており、2022年のワールドシリーズのヒューストン・アストロズ対フィラデルフィア・フィリーズの試合で、平均視聴者数が1,178万人というワールドシリーズの史上2番目に少ない視聴者数を記録した。
ピッチクロックの導入で試合が短縮される効果があったが、別の効果も生み出した。多くの人の目が球場に設置されたピッチクロックの表示に行くようになったことだ。これに着目したMLBは、このピッチクロックに広告をつけることを決めたようだ。現時点ではまだ販売方法が決まっていない。MLB全体で試合のピッチクロックに表示する広告を販売するか、各球団別にホームゲームのピッチクロックの広告を販売するのか、いくつか方法が考えられる。MLB全体で販売する場合には1,000万ドル単位の広告費を考えているようだ。MLBの30チームが個別に販売する場合にも、チームごとに数百ドル程度とも考えられるそうだ。
スポーツとタイミングのスポンサーの関係は切っても切れない。オリンピックはオメガがスポンサーになっているし、ロレックスはアメリカゴルフ協会のスポンサーだ。チソットはNBAの公式タイムキーパーの契約をしている。販売方法がどのようになり、それを、どのスポンサーが契約するのか興味が持たれる。当分の間、ピッチクロックに目が集まるので、タイミングやIT関連のスポンサーとしてはまたとないチャンスだ。
今年MLBは3つルールの変更を行なった。ピッチクロックと極端な守備シフトの制限とベースのサイズの拡大だ。中でも、最大のものはビッチクロックだ。
ピッチクロックのルールによれば、投手は走者がいない場合には、15秒以内に投球しなければいけない。走者がいる場合には20秒以内の投球が求められる。違反すれば1ボールが追加される。また、牽制球も3回目までにアウトにしなければ、失敗となり、走者は自動的に進塁する。つまり、2回しか出来ないということになる。
一方で、打者も残り8秒までにボックスで準備を整えなければ、1ストライクが加算される。すでに投手でも、打者でもピッチクロックへの違反者が続出している。その結果が試合時間の短縮につながっている。
守備シフトの制限は、内野手は2塁ベースを挟んで両側に2人ずつ位置しなければいけなく、しかも、グラウンドの土の部分に両足をつけていなければいけない。このために、内野手をどちらかの内野に寄せたり、外野に配置すると言うようなシフトは禁止となった。これに違反すると1ボールとなる。これにより大谷シフトのような守備体制をとることができず、ヒットが生まれる可能性が高まった。
最後のベースのサイズの拡大は、ホームベースを除いて、従来の38センチ四方から46センチ四方に拡大し、盗塁の成功率を高め、接触プレーの負傷を減らす効果も見込まれている。ベースの拡大により、ベース間の距離は16センチも短くなっている。これも影響して開幕以来、盗塁の成功率が上昇していると言う。
スポーツのルールは、メディアの要求や得点を増やしたりして試合を面白くするために常に変更されてきている。バスケットボールは、テレビ放送のために時間を短縮したし、サッカーでも同様に様々なルールが変更されてきている。
MLBでも1969年にピッチャーマウンドの高さを15センチほど下げて、打者に有利なような変更を行った。それでもアメリカンリーグは攻撃力が低下したので、投手戦が増え、得点が減ったので、指名打者を導入してヒットを生まれやすくした。その結果、試合に活気が出て面白さが増した。
MLB全体としては、大きな収益を上げているし、年間観客動員数も2022年には6,456万人とコロナ前の2019年の6,849万人に近いところまで回復している。今回のルール改正でさらに盛り上がる可能性もある。このルール改正の結果、大谷翔平にとっては不利な条件は無いために良いほうに働くような気もする。