カラヴァッジョの『ナルキッソス』

by Shogo

カラヴァッジョの『ナルキッソス』は、ギリシャ神話の登場人物ナルキッソスを描いていいる。彼は自分の姿に魅了されて水面を見つめ続け、最終的にはその場所で水仙に変わったとされる伝説の人物だ。カラヴァッジョは、自己愛とその悲劇的な結末を象徴するナルキッソスの姿を通じて、人間の虚栄心や内省をテーマとする作品を描いたという。宗教画ではないカラヴァッジョの作品の一つだ。

この作品では、カラヴァッジョの代名詞とも言えるキアロスクーロ(明暗法)よりも、水上と水面の上下二分割の構図が印象深い。そして、まず印象的には水仙が描かれていないことだ。そういうクリシェを避けて、より現実感を与えようとしていたのだろうか。

ナルキッソスの実像と水面の虚像の対比は、この作品の中心的なテーマの虚栄心や内省を表現している。ナルキッソスの実像は、細部にわたって丁寧に描れている。ナルキッソスの肌の柔らかさ、髪の質感、服のしわなどが丁寧に表現されており、彼の美しさと若さが際立っている。彼の表情は、自己への没頭と内省の深さなのだろう。

対して、水面の虚像は、実像とは対照的に、より幻想的で不確かなものとして描かれている。さらに、年老いた姿のように見える。また、水面のゆらぎによってわずかに歪んでおり、実像とは異なる、ある種の不安定さや非現実性を帯びている。これが、ナルキッソスの虚栄心を表している。

そして、全体を見ると、左からの強い光が、ナルキッソスの表情、腕、広い衣類を明るく照らし、そブリッジの構造が、虚像と結びついて円環を構成している。このキアロスクーロ技法は、この対比をさらに強調し、上下の実像と虚像に注目を集めて作品全体に緊張感を与えている。

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