ダブリンのカラヴァッジョ

by Shogo

短い時間にダブリンに2往復して疲れてしまった。仕事は微妙な調整を必要とする重大なイベントだったから緊張したことがあったのかもしれない。ダブリンを選んで仕事したわけではなく、仕事の場所がたまたまダブリンだっただけだが、ダブリンで良かった。結果的にアイルランド国立美術館でフェルメールを見ることができたからだ。その「手紙を書く女とメイド」は既に見たことがあったが、所蔵されている美術館で見ると言うコンプリートの条件を満たすためにアイルランド国立美術館にも行きたかった。

だが行ってみると、うれしいおまけがついてきた。アイルランド国立美術館には、カラヴァッジョの「キリストの捕縛」があったのだ。その絵は知っていたが、アイルランド国立美術館にあるとは知らなかった。

少しだけ夕方に空いた時間で行ったので、長く美術館にいなかったが、「キリストの捕縛」も鑑賞できてよかった。その絵は、イエス・キリストは逮捕される瞬間を描いたものだ。キリストとキリストに掴みかかる兵士たちの衝突が描かれている。そこには混乱の中で、静かな表情をしたキリストと兵士の驚きや苦悩の表情と体の動きが描かれた非常にダイナミックな絵だ。

他のカラヴァッジョの作品のように、光と影が大胆に使われ、キリストの姿は明るく照らされている。それに対して周辺の逮捕する兵士たちは、闇に沈んでいる。カラヴァッジョが意図したキリストの神聖な存在感の表現がよく分かる。明く照らされたキリストが画面の左に配置されていることで、画面に動きが感じられ、より逮捕の瞬間の混乱が表現されているようだ。

そして、周辺の混乱とは対照的に、キリストの手は下の方で組み合わされて無抵抗の運命を受け入れるポーズをとっている。これに対して武器を手にした兵士たちは、暴力的にリストに手をかけながらも、怒りや狼狽した表情を浮かべている。それはまるで神聖なものを冒涜していることを自覚しているかのようだ。この対比からもカラヴァッジョの才能を窺い知ることができる。

偶然にもこの絵を見ることができて本当によかった。大きなイベントのためにこの数ヶ月ストレスが極限に達していた。しかも2度の長距離の旅行でくたくたにもなっていた。でも、この「キリストの捕縛」とフェルメールを見たことによって、十分にその疲れは癒されたような気もする。

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