国連人口局が今後の高齢化の進行の推計を発表していた。65歳以上の人の数は今後30年間で倍増し、2050年には16億人に達すると予想している。特に東アジアの香港、韓国、日本は2050年までに65歳以上の人々の割合が最も高くなる。
2024年時点の65歳以上の割合は、日本が最も高く30.2%、2位のイタリアは24.9%、3位のフィンランドは23.9%、4位のプエルトリコは23.9%、5位がポルトガルの23.7%となっている。これが、2050年のランキングでは、1位が香港で、なんと40.6%、2位が韓国で39.4%、日本は3位で37.5%だ。4位がイタリアで37.1%、5位がスペインで36.6%。これに続く国も軒並み30%超えだ。世界各国が、現時点の日本のような高齢化社会を迎える。
人口の高齢化が進む理由は2つある。まず、平均寿命の伸びだ。医療技術の発展や生活水準の向上により、平均寿命が延びる。日本の1947年の平均寿命は男性65.9歳、女性67.1歳だった。それが、2022年には男性81.47歳、女性87.57歳まで上昇している。これは、個人としては喜ばしいことだが社会的には多くの問題を生む。
2つめは、出生率の低下により、若年人口が減少していることだ。日本の2022年の合計特殊出生率は1.30と、人口維持に必要な2.07を大きく下回っている。晩婚化・未婚の増加が要因だと思われるが、これは日本だけではなく、多くの先進国では一般的な現象だ。
これらの要因により、世界各国も日本も高齢者人口の割合が年々増加している。今後も高齢化は進み、それが16億人ということだ。人類の歴史でこれほど多くの人が暮らしたことはなかった。これは、様々な経済的・文化的な成果を人類にもたらすが、一方では課題も多い。
2024年で30.2%の高齢化社会の日本では、すでに問題が顕著になってきている。まず、社会保障負担増加だ。高齢者人口の増加により、年金や医療などの社会保障制度への負担が増加し、社会保障制度を維持するためには、保険料の引き上げや給付内容の見直しなどが近日中に必要になる。これは、いますぐに対策を決めなければいけない。
次の問題は労働力不足だ。生産年齢人口の減少により、労働力不足が深刻化する。女性や高齢者の雇用促進がさらに必要で、ロボットなどの活用も考慮すべきだ。GDPの低成長も、この労働人口の長期的な減少傾向と関係があるのだろう。女性の社会進出は進みつつあるので、今後は高齢者のうちの希望者を労働力として活躍できる仕組みや制度を検討すべきだろう。この問題は、すでに数十年前から予測されたことで、何も有効な対策を取ってこなかった政治の無策を厳しく問うべきだろう。
しかしながら、現政権が進めるような安易な移民政策はまた別の問題を生む。この点は多くの識者が指摘しているが、ユヴァル・ノア・ハラリのどれかの著作で触れられていたように、移民への対応は数世代後に大きな社会問題を引き起こす可能性があることも考慮して慎重な判断が求められる。
そして、高齢化社会の次の問題は、高齢者の健康問題と高騰化する医療費だ。高齢者は様々な健康問題を抱えるようになる。このための医療費の負担は確実に増加する。医療技術の進歩のために医療費がさらに増加する。これは、個々の国民やその家族のためには素晴らしい。だが、その費用をどのように捻出するかが社会全体の課題となる。そして、介護が必要となる高齢者も増加するため、介護サービスの拡充や、高齢者の健康維持・増進のための取り組みが必要となる。これは、個人的にも直面している問題だ。これは、介護費用だけでなく、介護を担う労働力の問題とも関係する。
高齢化社会は、様々な課題を抱える。しかし、このような問題が起こることは分かっていたが、何も対策を取ってこなかったツケを今払っている。そして、高齢者人口が37.5%となる2050年には、何も対策しなければ、経済も社会保障も壊滅的な打撃を受ける。今後の日本の進むべき方向性について国民のコンセンサスを取ったうえで、課題解決に取り組むことで、誰もが安心して暮らせる社会を実現して欲しい。このようなことが、今の政治に可能だろうか。暗澹とした気分になる。