アメリカ史上初めて、刑事訴追中の大統領候補が勝利を収めた。他国のことではあるが、温暖化問題も含めて不安な気分になる。
大統領選出者の勝利スピーチは見なかったが敗者の敗北宣言演説はYouTubeで見た。10分ほどの短いものだ。語る事はあまりないからそんなものだろう。
今後も自由と安全と女性の権利のために戦い続けるという事だった。これからアメリカを多くの星が輝く良い国しましょうというのが締めの言葉だった。その言葉を導き出すために、格言として紹介したのが、「Only when it is dark enough can you see the stars」だった。日本の「夜明け前が一番暗い」とは似ているが少し異なり、困難な状況だからこそ見える希望の光を表現しているのだろう。全く知らなかったので調べてみると、この言葉は、マーチン・ルーサー・キングの言葉だった。
この言葉は、彼の最後の演説として知られる「私は山頂に登った」(I’ve Been to the Mountaintop) スピーチで語られていた。1968年4月3日にテネシー州メンフィスで行われた、この演説の翌日に、キング牧師は暗殺されている。
60年代の公民権運動や混乱と対立の中で、困難な時期だからこそ、希望を見出すことができるのだと訴えたのだそうだ。
YouTube動画では、涙を流す多くの女性の姿が印象に残った。やはり、アメリカでも女性の大統領は受け入れ難いのだろうか、経済政策など他にも理由があるのだろうか。今回の選挙でもロシアの干渉が噂されている。2016年の大統領選挙では、Facebookユーザーの個人情報を不正に収集し、4000以上のキャンペーンを実施したケンブリッジ・アナリティカ(CA)は、ロシアとの関係が指摘されている。
ケンブリッジ・アナリティカ事件では、Facebookユーザーの個人情報が不正収集され、候補者への印象操作が行われたと言われている。英国の情報機関は、ロシアからのアクセスで不正にデータが収集されたことを確認し、CA幹部とロシア政府高官との接触も明らかにしている。つまり、2016年の大統領選挙の結果にロシアの影響力が一部働いたという見方もある。
では、今回はどうだったかということ、今回もその疑いがあるようだ。NYTの報道によると、ロシアは民主党の大統領候補を標的とした偽造ビデオを大量に制作したと指摘している。
具体的な証拠として、ロシアのシンクタンク所長が、アリゾナ州での選挙不正を主張する偽造インタビューを実施したという。この人物は資金洗浄の罪で米国で服役した後、2021年にロシアに帰国したそうだ。また、フロリダ州の元保安官代理は、民主党の副大統領候補を標的とした動画をSNSで公開した。彼は以前、ロシアのプロパガンダ機関との関係が噂されていたそうだ。
NYTがまとめた今回の干渉工作の特徴は、以下の点だ。
- AIを活用した偽ニュースサイトの大量作成
- ソーシャルメディアプラットフォームでの組織的な偽情報拡散
- 米国の政治インフルエンサーへの資金提供(約1000万ドル規模)
もちろん、民主党を応援するNYTの言い分だけを鵜呑みにはできないが、ロシアの陰謀かどうかは別にして、多くのことが動いていたようだ。
ただし、確実に言えるのは、この選挙結果の地政学的な影響だ。この選挙結果はウクライナ情勢に影響を与えるだろう。NATOとアメリカのウクライナ支援の方向性が変わる可能性があり、それはロシアにとって重要な意味を持つ。また、東アジアへの影響もあるだろう。だからと言って干渉したのかどうかは分からない。ともかく世界では様々なことが起こっている。
とりあえず「Only when it is dark enough can you see the stars」だけを考えよう。世界が様々な課題に直面する中、暗闇の中にある希望を見失わないようにする必要がある。そして、日本にも希望があると信じられれば良いのだが。