石破首相のトランプ次期大統領との会談は2月以降になったようだ。だが、すでに多くの各国首脳はトランプ詣をしている。それだけではなく、従来は民主党派の大手テック企業トップも列をなしてトランプ次期大統領に会っている。当然のことながら主義や主張や、ましてや次期大統領への尊敬の念を持って会いに行っている訳ではない。
その中には、カナダのトルドー首相が、トランプ次期大統領に会いに行ったと報道されていた。これは、カナダやメキシコ、それから中国との貿易について関税を引き上げるとの発言から、カナダとしての対応を考えているのだろう。
トランプ政権下では、貿易政策においていくつかの大きな変化が起こると報道されている。特にメキシコとカナダからの全ての輸入品に対して25%の関税を課し、中国からの輸入品には追加で10%の関税を課すとしている。
多くの経済学者や専門家は、このような高関税政策がアメリカ国内の消費者や企業に負担をもたらすと懸念していている。例えば、輸入品の価格が上昇し、インフレを引き起こす可能性が指摘されている。
また、アメリカ国内の製造業にも影響が及ぶとされている。北米自由貿易協定(NAFTA)やその後継協定であるUSMCAによって統合された北米のサプライチェーンが、高い関税によって混乱するだろう。特に、自動車産業では部品が国境を何度も行き来するため、このような貿易が25%の関税によって脅かされることになる。メキシコに工場を持つ日本の自動車会社にとっても大きな問題だ。
トランプ大統領は、これらの関税がアメリカの製造業を活性化し、政府支出を支えるための資金調達に役立つと主張している。これは本当にそうなのだろうか。素人目にも危ない話だ。むしろ、インフレと不況をもたらすとしか考えられない。素人目からの話だが。
アメリカ合衆国は、世界最大の輸入国であり、2022年には3.2兆ドルの輸入を記録した。アメリカの主要な貿易相手国は、中国、メキシコ、カナダ、日本、ドイツなどであり、これらの国々との貿易がアメリカの経済に大きな影響を与えている。
アメリカの主要輸入相手国
2022年のデータによると、アメリカの輸入における主な相手国は以下の通り
- 中国:5363億ドル
- メキシコ:4548億ドル
- カナダ:4366億ドル
- 日本:1481億ドル
- ドイツ:1466億ドル
これらの国々は、アメリカが必要とする多くの商品を供給しており、特に自動車、医薬品、石油・ガス、通信機器などが主要な輸入品目だ。
2023年には、メキシコが中国を抜いてアメリカの最大の輸入相手国となった。メキシコからの輸入額は4756億ドルに達し、中国からの輸入額は4272億ドルに減少した。この変化は、米中間の貿易摩擦や政策変更によるものとされている。
アメリカは長年にわたり貿易赤字を抱えており、2023年には1兆ドル以上の赤字を記録した。特に中国やメキシコとの間で大きな貿易赤字が続いている。この赤字を、トランプ次期大統領は標的にしているということなのだろう。
当然、日本への影響も多岐にわたると予想される。トランプ大統領は日本を含む外国からの輸入品に対して10%から20%の関税を課す方針を示している。特に自動車産業においては、メキシコで生産されアメリカに輸入される自動車に対して最大100%の関税が課される可能性があり、日本の自動車メーカーに大きな影響を与える。日本に残された最後の産業と言っても良い自動車メーカーは生産戦略の見直しを迫られるだろう。円安を背景に国内回帰を考えるのだろうか。
為替にも影響が出ると言われている。円安が進めば、日本の輸出企業は利益を上げやすくなる一方で、原材料の輸入コストが上昇し、国内物価が押し上げられるリスクがある。賃金の上昇が抑えられている中でのインフレは怖いものだ。別にトランプ政権の発足とは関係なく変化は常に起こる。これから、さらに日本経済に複雑な影響を与えるかもしれない。
トランプ大統領の貿易政策は保護主義的な傾向が強く、日本との貿易交渉にも影響を及ぼす可能性があるだろう。過去には日本に対して農産品の関税引き下げを求めた経緯もあり、新たな貿易協定交渉が必要になると見込まれている。
グローバリズムの終焉
冷戦終了後のグローバリズムは、終わるのだろうか。ベルリンの壁の崩壊やソ連のロシアへの移行は、IMAGINE的なユートピアの夢を見させてくれた。中東の局地的な戦争はあったが、世界中の人が仲良く暮らす未来がくるように思えた。
だが、中国の民主化が進まないことからくる米中対立やロシアのウクライナ侵略など近年の地政学的な緊張や経済政策の変化によって、保護主義的な貿易と経済への移行が進んでいるようだ。世界経済は新たなブロック化へと向かうのだろうか。第二次世界大戦前のブロック経済圏的な悪夢が始まっているようで嫌な気分になる。
政治的な関係は別にして、日本は米中両国との経済関係が深い。このため、このようなブロック化や保護主義的な動きから大きな影響を受ける可能性がある。特にサプライチェーンの再構築や貿易ルールの変化に対応する必要があるだろう。ただでさえ、見通しの暗い日本の経済や社会はどうなるのだろうか。日本のリーダーたちの意見を聞いてみたいが、もっと瑣末な問題で、そんな暇はなさそうだ。