新しい引き伸ばし機の試運転。やはり慣れているいままでのものと違い、勝手が違うのでなかなかスムーズに進まない。なんでもそうだが、初めてのことは大変なのだ。
今度の引き伸ばし機は40kgものものをロンドンから持ち帰ったもので、集散光式だ。今までの散光式と違ってフィルム付いている塵や埃がすぐに出てしまう。散光式は光がいくつかの方向からネガに当たるので塵や埃は目立たなくなるか全く出ないのだが、集散光式ははっきりと出てしまう。その分、ネガの銀の結晶がきちっと印画紙に反映される。今までの散光式ではあまり影響がないことから、丁寧にネガをブロアーで埃を飛ばしたりしていないので、この習慣を身につけないと高い印画紙を無駄にすることになる。真っ黒な印画紙にポツッと白い点を見つけると悲しくなる。
今までの引き伸ばし機はラッキーのもので片手でも持てそうなほど軽いものだが、今回のFocomat 2Cはなめらかに動くが部品は重いし見た目にも重量感がある。渡部さとるさんの「旅するカメラ」で読んで以来の憧れの引き伸ばし機だ。見た目も良いが動きも良い感じだ。まだ、オートフォーカスの調整をしていないので、ほんのテストだけだが、水温が上がってくるまでに本格的に稼働させようと思っている。
古いラッキーの引き伸ばし機はカラー引き伸ばし機なのでカラーのダイヤルを調整して多諧調印画紙の号数を決めていたが、今度の引き伸ばし機ではフィルターが必要で買いにったが、 Focomat 2Cのフィルターの引き出しにちょうど入るものがなく大きいものを切ってつかっている。ちょっともったいない気もするが仕方ない。
今は170年ほどのアナログ写真の歴史のなかですでに衰退期に入っているからフィルムや印画紙も含めて適切なものがないことはやむを得ない。問題はどんなかたちであれいつまで残るかだ。でも今でも墨と筆で書道を楽しむ人がいるように少なくとも私がこの世に居る間は残ってほしいものだ。でも間違いなく今回手に入れた引き伸ばし機はすでに40年ほど前のものだが、あと100年やもっと十分に使えそうな感じだ。
Focomat 2Cは、ロンドンの中古写真機店で見つけて、ホテルに送ってもらった。届いたら、なんと箱が3つ。箱の重さやパッキングで巨大で重い荷物となってしまった。ちょうど同僚と同行していたので、1箱は彼の荷物として飛行機に預けた。二人でビジネスでなければ、持って帰れなかったかもしれない。それに、ちょうど成田から自宅までのハイヤーサービス付きだったので助かった。大事に使って、死ぬまで使おうと思っている。