「マリオ・ジャコメッリ 写真展」

by Shogo

今年の写真の展示では一番楽しみにしていた「マリオ・ジャコメッリ写真展」に出かける。3月から始まっていたのでようやくという感じだ。すでにほとんどの写真は写真集で見ていたので、これがあの写真のプリントかと確認する感じだ。プリントはすべて、この展示のために別の人が焼いたということだが、マリオ・ジャコメッリはプリントの際にかなり手を加えて焼いていると思っていたので、写真集と同じように焼けているにはやや拍子抜け。苦労して同じように焼いたということか、それともネガを普通に焼けばそうなるのかは不明。残念なのはプリントによっては角が折れていたり破れたものまであって、日本人的にはちょっと許せない。

写真展としてはマリオ・ジャコメッリの作品が網羅されて一同に見られるのはやはり圧巻。プリントの文句も書いたが、コントラスが高い写真の黒い部分も良く見るとつぶれておらずなかなか見応えがあった。ただ、中には黒さが足りないようなプリントもあって、個人の趣味だから仕方がないが、残念だ。

しかし、マリオ・ジャコメッリが単に白を飛ばして黒を強調しただけではないことがよく分かった。「私にはこの顔を撫でてくれる手がない」というタイトルの神学校の若い学生の写真の白と黒、その造形は何度見ても圧倒されるものがある。先に書いたように、その黒もちゃんと諧調があってオリジナルで見るとそれが良く分かる。

基本的にはコントラストが高いより低い写真。たとえば鬼海弘雄さんのようなハイライトも黒も無い写真が好みだったが、この1年ほどはコントラストをあげてハイライトのある写真を作ろうとしているが、それでもマリオ・ジャコメッリのようには怖くてできない。

シリーズにはホスピスの老人の肖像や働く人の姿から、抽象画のような風景画まで幅広く、生涯を通じて色々な作品を作ったことが分かる、マリオ・ジャコメッリを知るためには最高の写真展だ。

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