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のんびりと三連休。ギャラリー巡りをとでも思ったが天気が悪く結局、出かけずじまい。積読の消化とビデオ蓄積の消化に精をだす。鬼海弘雄さんの本とか写真集があったのだが、東京写真美術館の展示で見たペルソナの印象が強く、その時はあまりピンと来ていなかった東京の街の写真を見返してみる。
「東京夢譚」は東京周辺をの街中を撮った「東京迷路」に続く作品だが、前回よりは静かな印象がある。理由は何でもない街並みが撮られていることや写真家の街歩きの話とその街から連想される写真家の昔語りが挟み込まれるせいかもしれない。街の写真から写真家の過去の人生が見えてくるような気がする。
今の好みよりは軟調な写真だが良く見ていると求めている写真の世界があるような気がしてきた。人の登場しない写真に生活の気配が感じられる。さっきまで人の生活の場となっていた街かどが、何かの拍子に別の表情を見せているような写真だ。そこに写真家の人生の物語が重なる。「ペルソナ」の写真家だから登場する人物の話も面白い。私のような退屈な人生はここにはない。
軟調についてだが、このところ写真には黒いところがなければいけなくて、その黒さが写真の美しさだと思っているので、軟調は好きではないのだが、鬼海さんのこの写真だけは軟調で無ければいけない気がしてきた。それは、軟調だと目で見る景色とは違って別の世界のように見えるからか、全体の諧調に魅惑されるせいなのかどちらか分からないが、この感じがこの写真集の魅力だとやっと気がついた。