写真の力

by Shogo

年末で特にやることもないので、久しぶりに代官山のTサイトに暇つぶしに行った。次回の旅行に向けて、旅行本のコーナーを見た後、新刊の写真集をいくつか見た。買いたいほどのものがなかったので帰ろうかと思ったが、東京都写真美術館にもう一度行こうと思い立った。

恵比寿で車を停められるかどうか不安があるので、歩くことにした。カメラも持っていたので、撮影しながら散歩。天気も良く、光も美しかった。

東京都写真美術館にもう一度行こうとしたのは、前回、野口里香さんの展示の「不思議な力」を見て、よくわからなかったからだ。しかしもう一度見ても、やはりよくわからなかった。

屋内の小宇宙のようなシリーズから動植物のシリーズ、お父さんが撮られた写真の「父のアルバム」シリーズ、映像の作品、「潜る人」のシリーズ。あまりにも盛りだくさんで全体を括っているキーワードの「不思議の力」の印象が散漫だ。世界はある意味で、不思議な力で満ちていることは事実だ。それをあまりにも違う世界や被写体を見せられても複合的にとらえる能力が私にはないのかもしれない。

野口里香さんの作品では、以前に図録で見た「光は未来に届く」のような作品群であれば理解しやすかった。だが、今回の展示は二度見てみてもやはりよくわからなかった。それでも最後のコーナーに展示されていた「潜る人」のシリーズは、前回と同じようにすごく良い。プリントの巨大さの迫力もあるが、それ以上に写真の持つ、新しい世界を見せているように感じた。それは、潜る人が歩いている姿を潜る前に見せているということだと勝手に解釈した。

せっかく東京都写真美術館まで行ったので、地下の星野道夫さんの展示「悠久の時を旅する」と三階の「プリピクテジャパンアワード Fire & Water」の展示も見た。

星野道夫さんの展示室は、今まで都写美で見たことのないような人だかりだった。アラスカの自然の風景、カリブやグリズリーは素晴らしい迫力で多くの人を惹きつけるのだろう。これは写真の力の一つだ。ドキュメンタリーのジャンルの写真にあまり興味がない私でさえ、一つ一つの写真をかなり見入ってしまった。その1枚1枚の写真を撮るために、使われた技術や長い長い時間を思うと目眩がするようだ。

最後に三階に行って「プリピクテジャパンアワード」。こちらは、星野道夫さんの、写真の最高峰ではあるが、表現としては伝統的つまり平凡に感じさせるほど、写真表現の新しい取り組みがされており、非常にエキサイティングな展示だった。展示されている8名の写真家の作品は、それぞれ特徴があり、伝統的な写真の枠組みを破壊しようとする試みに思えた。

特にマイクロプラスチックを撮影した岡田将さんの作品には、美しさとその裏にある恐怖を感じさせ、我々の社会が持つ問題を写真と言う表現形式を使って提示している。これは、人の眼では見えない世界を見せて現実を暴く、写真表現の本質的な役割を明確に示している。

都写美を出て、来た時とはとは違う道を通って、恵比寿の街から代官山まで写真を撮りながら戻ってきた。

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