市ヶ谷の貸し暗室、カロタイプからメールが来て、年内に営業が終了するとの知らせがあった。自宅暗室が、暑かったり寒かったりするときにはカロタイプにプリントを焼きに行っていたので、その選択肢がなくなるかと思うと残念だ。しかしそれ以上に残念なのは、白岡先生の毎週お目にかかって話を伺った思い出の場所がなくなることだ。
白岡先生が主宰する講評講座と言われるクラスに参加していた。写真を持っていって、写真を見せて、他の参加者から意見をもらったり、白岡先生からもコメントやアドバイスをもらったりするクラスだった。参加していた期間は2年ほどで、他の参加者比べると長くはなかった。ロンドンでの仕事が決まり、長期出張に行き、そのまま赴任する可能性があったため講評講座の受講を止めたのは2012年だったと思う。
その後、白岡先生がカロタイプから引退されると聞いたので、その引越しの最中に伺ったのは2015年の年末だった。その時が、白岡先生にお目にかかったのが、最後で、翌年春に先生は亡くなった。
その後、カロタイプを2016年から引き継いでくれた会社は、同じように貸し暗室を営業してくれていた。モノクロのプリントをするものにとっては大変ありがたい場所で、しかも、以前より慣れている場所で、システムも同じだったから、快適にプリントすることができた。また、そこに通ってくる何人かの人も、以前より知っている人だったので、その人たちと話すことも楽しかった。なかなかそのような場所を持つ事は難しい。その意味で、この6年間、カロタイプを引き続いで引き継いで今まで営業してくれた会社には感謝しかない。
仕事が忙しかったことと、ようやく時間ができた昨年からコロナ禍が始まったために、この3年ほどは、プリントをするためにカロタイプに行っていなかった。その間に撮ったネガが溜まってきているのだが、もはやカロタイプでプリントすることはできない。自宅のガレージ暗室を片付けて、プリントできる状態にすることと、都内でどこかプリントできる場所を探さなければならない。
カロタイプから来たメールには、未使用分の使用時間の返金の連絡が含まれていた。カロタイプは事前に銀行振り込み行って、カードを作ってもらい、暗室を使用するたびに、そのカードから使用時間を引いていくシステムをとっていた。私の場合には10時間が未使用で残っており、その対応する金額を返金いただけるそうだ。何年も経っており既に時効かと思うが、この点も大変ありがたい。
歳をとると言う事は、こんなふうに世の中が変わっていくことを見ることだなと寂しい気持ちになってくる。
モノクロのフィルムの値段は、以前より4、5倍の値段にもなっているが、もうしばらくは自分がフィルムを使って、少しでもフィルム写真の文化が残ることに貢献したいものだ。