風力発電のことを書いて思い出したのだが、30年以上も前にエイモリー・ロビンスが書いた 「ソフト・エネルギー・パス」という本を読んだ。簡単に言うと原子力発電所とかの大規模・高電圧発電所を作るのではなく、小規模・低電圧発電所を消費場所の近くにたくさん作って低電圧の分散ネットワークにしようということである。
大規模・高電圧の発電は作るのも大変だが、配電するのも変電所を作ったり高電圧の送電線を作ったりして大変だから、家庭で使うような低電圧の電気は家庭のそばで低電圧発電で行う方が良くて、それをソフト・エネルギー・パスと呼んだのだった。バターを切るのに電気のこぎりを使ったりしないというような表現で、ソフト・エネルギー・パスの理を訴えていたと記憶する。
だからイギリスの風力発電が低出力でもかまわないのである。その電力がイギリスの東部の海岸に近い20万戸の家庭の年間の電力を賄っているということが重要なのだ。非常に印象に残っている本なので捨てたり古本屋に売ったりしていないが、手元にないのは実家に送ったためだろうか。
先日書いた風力発電の話は、いくつかコメントをいただいたように台風や津波の被害に可能性が高い。でもそれでも放射性物質の流失というような事故にはならない。原子力発電に比べると発電量は少ないものの建築コストは低く、さらに放射性物質を扱うリスクや処理に比べればはるかに安全かつ低コストでメリット多いと思う。1キロワット当たりのコストを比べて原子力発電が安いのは事実だと思うが、送電ロスや処理コストを考えればその差は埋まる。
最近は日本でも風力発電も増えてきたが、なにせ狭い国土で数は稼げない。何年か前にヨセミテへ行った際にかなりの数の風力発電をサンフランシスコの郊外で見かけた。あんなに空いた土地があって、風力発電に使えるわけではない。海とて、風力発電を作れる場所がどれだけあるか分からない。それに、環境破壊も起こるだろうから、十分な発電は難しいが、もう少し検討してみてはと思う。電力行政の方々は原子力しか頭にないらしい。
分散システムというなら、各家庭に低電圧の発電機があるのがベストで、それは太陽光発電でも燃料電池でも良い。どちらもパネルが安いとか燃料が水だけとかで安いという条件が付けば、送電の無駄を省いて大きな発電所は予備電源と産業の供給に徹することができる。原子力発電に使うお金をこういう補助金として投入すればもっと安くできるのではないだろうか。こういうことが夢物語でなく実現できる世の中になれば良いと思うが、それはいつだろう。
原子力ありきで進めるのはやめてもらいたい。今年の夏も暑いが可能な限りエアコンを使わないつもりだ。だが、現実には無理なことが多くて申し訳ない気持ちだ。
写真は、ロンドンのRitz Hotelの屋根の部分