夕方まで時間があったので目黒まで「秋岡芳夫展」を見に出かける。目黒美術館は初めてだったが良く通る山手通りとか目黒通りのすぐそばに森に囲まれた区民センターがあるとは知らなかった。その区民センターの中に目黒美術館はあった。
秋岡芳夫さんという人は実はよく知らないのだが、工業デザイナーでいくつかのカメラや露出計のデザインをしたことと、胡座のかける椅子のデザインをしたことだけ知っていた。それで古いカメラを見るために出かけたのだ。会場には、セコニックの露出計、ミノルタのカメラ、ゼンザブロニカDが展示されていた。それをデザインしたには訳があって、若い頃から写真が好きなようだった。ライカの収集をしていたということは知っていたが、写真が好きで若い頃にリンホフを購入したことなどが年表に書かれていた。
日本における工業レタリングの先駆者で、ライカの彫り込まれた文字を理想としていたということでライカの文字がいくつも写真で展示されていた。やはり自分が美しいと思っているもでは専門家でも美しいのだなと変な納得。
知らなかったことは、もともと木工が好きな人で工業デザイナーの仕事をやめ、木工を始め、いくつかの町や村の町おこしとして木工の製品の開発に力をいれ、それが今でも続いて産業になっていること、若い頃に童話の絵をかいていたこと、それから学研の「科学」の模型を作っていたこと。
その「科学」の模型のコーナーで出会ったのが、一番好きだった蒸気で進む船。学研の科学の付録で色々なもので遊んだことは良く覚えているが、一番好きだったのは、その蒸気で進む船。
水を入れた小さな容器を船に着け、その金属の水のタンクを蝋燭で熱して、タンクから伸びた細いパイプが水中に入っていて、そこから水が沸騰してできた水蒸気をはき出し、それを推力として進む船だ。 うまく説明できないが、水が沸騰して薄い金属のタンクの部分がパコパコと音を立てながら船が進む。子供には火を使うこともありまるで本物のエンジンのように思われた。これに、また出会えた。
会場では木工の食器や道具など、現代の工業至上主義の崩壊を予言しているような自然への回帰などの先見性があったことがよく分かる展示になっており、工業デザインの時代から自然回帰までの秋岡さんの活動がよく分かり、この偉大なデザイナーであり思想家であった人の多くを知ることができたと思った。そして何よりの収穫は、子供の頃の一番のおもちゃであり、いまでも思い出す蒸気駆動の船にまた出会えたことだ。
昨夜遅く帰ったこともありエルも遅くまで寝たことに助けられて、ゆっくりの日曜日の朝だ。天気も悪そうなので出かけないで、フィルム現像でもするかな。
DOMA秋岡芳夫展 -モノへの思想と関係のデザイン
会 期: 2011年10月29日(土)〜2011年12月25日(日)
時 間: 10:00~18:00
休館日: 月曜日