雍和宮 チベット仏教寺院

by Shogo

土曜日は抜けるような青空で、久しぶりに観光地へ。 気温は低いが日差しが暖かい。行ったのは北京の雍和宮である。北部と言っても、二環路の内側なので、北京の外城の内側だ。現在では、 二環路があり、地下鉄も2号線と5号線の乗り換え駅なので交通の便がよい。

このあたりの街並みは、 雍和宮や孔廟などの観光地を少し離れるとなかなか古くて雰囲気が良いので、何度か出かけているが、今まで雍和宮の中に入ったことはなかった。

入り口の立派な門の前でチケットを25元で買うと、チケットの中にCDが入っており、映像で雍和宮の紹介になっている。音声は中国語だが英語のテロップがでる。これは、初めて見るチケットだった。この入り口の門の木の柱は、戦前に当時の日本の占領軍が持ち去ったため、現在はコンクリートだそうだが、それはどこにいったのだろう。返還されていないということは、どこに行ったのか分からないということなのだろう。

雍和宮は南北細長い敷地に建てられており、どんどん奥へ奥へとお堂がつながる。ここは最初のお堂。みんな山ほどのお香を抱えて、お祈りを捧げている。中国の仏教のお祈りはひざまずいて、頭を地面に近づけて祈るので、どこにも膝を置く台が設けられている。

お香はかなりの火力でどんどん燃えている。浅草の浅草寺のお香の雰囲気とは少し違う。そのせいか、どちらが先か分からないが、お香そのものも巨大だ。この時点では、若い人も含めて信心深いと思っていた。

それが、このお寺は受験に霊験があるためだと知ってからは、なんだか納得できた。若いのに真剣にお祈りを捧げる姿は真剣そのもだったので、中国の若い人は信心深いとおもっていたのに。

雍和宮は、明の皇帝が皇太子時代に住んでいた邸宅を後に寺院にしたものだそうだ。だから、名前も「寺」ではなく、「宮」がついているようだ。理由は分からないが、この皇太子が皇帝に「出世」した場所だから、受験に効果があるということなのだろうか。

中国のセンター試験のような統一テストは途轍もなく難しく、高得点を取る人は本当に限られているそうだ。だから、神頼み、仏頼みということなのだろうか。同じ祈るなら、より学問に近そうな孔子の方が御利益がありそうだが。

孔子を祀る孔廟は歩いて5分の距離だが、そちらにはこのような若い人を見かけないし、祈る人もいない。儒教は現在の中国では人気がないらしい。

お堂の中の仏像はすべて素晴らしいものである。さらに、日本の仏像より私のような素人の目からでも、より明確にインドの影響が見られる。 仏教はインドから伝わって来たのだなという実感があった。そもそも、書かれている文字も漢字に、チベット文字に、多分サンスクリット文字だろう。こちらは現代の日本でも同じように使われているのを先日も見た。

多くの人が一束もあるお香をいくつもの祭壇に捧げて行くので、お寺の中はお香で煙っている。

それにしてもみんな熱心だ。中国は欧米諸国の身分制と少し違って、千年間以上も科挙という制度があったため、試験の結果によって人生を変えられるという信念があるのだろう。このあたりは、明治以降の日本と似ているかもしれない。貧富、人種、身分に関係なく、立身出世が可能だった制度。試験。無いよりはましだ。

ちょうど、YouTubeでオバマの勝利スピーチを見たばかりだったので、正確には覚えていないし、確認もしていないが大体こんなことだったと思うが、「アメリカは一つであり、それが建国の精神。一部が儲けて多くが苦しむことはない。国を正しい道に戻す。私たちの子供に機会というドアを開いておいてあげよう」

中国にも、そのドアとして試験という制度が設けられていたのだろうか。それが仮に皇帝の統治のシステムに組み込まれることだとしても、辺境の地から、「肌の色や貧富や身分に関係なく」、親とは違う職業につけるシステム、科挙。その信念が、まだこの国に生きているのだろうか。

太平洋の向こうに、かつてのケネディの就任演説に匹敵するほど感激するビジョンを示す政治家が誕生し、西の大国の若者たちは大学受験に努力し、真剣に仏に祈る。

私の小さな国は、「勝ち組と負け組」を選別し、身分制度を導入することにやっきだ。明治以降のシステムも機能せず、戦後の民主主義の精神も忘れ去られようとしている。国を「建国の精神」に戻そうというビジョンを示す政治家もいなければ、そもそも「建国の精神」が明確にない。

二つの大国の間で、私たちの子供の世代の「可能性のドア」を私たちは開けておけるのだろうか。

(このブログは、私の日記であり食べ歩きであり散歩の記録なので、 政治信条やニュースに反応するものではありませんが、今回だけオバマの演説に反応してしまったので、お許しください。明日からは、散歩の記録だけです)

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