スマホの普及が始まって、メディア接触が大きく変わったと感じていませんか?特に20代以下の若者はスマホばかり見ていると思いませんか?
これが、感覚ではなく調査で明らかにされています。NHK放送文化研究所が発表した国民生活時間調査によると、10代・20代の約半数は、テレビに接触しません。テレビを全く見ない若者が増えているのです。反対に、インターネットの接触はすべての年代で増えており、特に16歳〜19歳では80%が 20代で73%が、毎日インターネットに接触しています。だから、インターネットを利用しなければ、若い世代には到達できません。
インターネット広告費の急成長
このメディア接触の変化は、広告費にも反映されています。インターネット広告費は、2010年から2020年にかけて約3倍になり、1兆7,567億円に達しています。2019年にはインターネット広告費がテレビ広告費を追い越したことが話題になりました。そして、2020年にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4媒体の合計が、インターネット広告費と同程度です。
インターネット広告の特徴
インターネット広告が急成長した要因は、接触時間の増加だけではありません。インターネット広告では、ユーザーの属性や行動履歴を正確に把握できます。このために、高い精度のターゲッティングが可能で、大きな効果が期待できるからです。
これは、閲覧ソフトの「クッキー」という仕組みや、スマホの端末識別番号によってユーザーを追跡しているからできることです。特定のサイトを訪れた人や特定のキーワードを検索した人に対して広告を配信できます。つまり、見込み度の高いユーザーに広告を配信して、購入に結びつけることができます。
そして、実際に購入したかどうかも、リアルタイムでの把握が可能です。マスメディアの時代にはできなかった精度の高いターゲッティングと効果の測定が可能な点が、インターネット広告の成長のもうひとつの理由です。
インターネット広告の種類
インターネットの広告には、大きく分けてバナーと呼ばれるディスプレイ広告、動画広告、それにGoogleなどの検索で、サイトが表示されるリスティング広告があります。
どちらも、属性や行動履歴に基づいて、購入の可能性の高いユーザーだけに広告配信できます。さらに、実際に広告がクリックされたときにだけ、広告費が発生するクリック課金となっています。
プライバシーによる制限
しかしながら、プライバシー意識の高まりとともに、ユーザーの属性や行動履歴をプライバシーとして制限する動きが出ています。Appleの閲覧ソフト、Safariでは、サイトを跨いだクッキーは、すでに利用できません。そして、iPhoneのiOS 14.5以降では、プライバシーポリシーを変更して、ユーザーの同意なしに、個人情報を共有できなくなりました。Googleも2023年にはサイトを跨ぐクッキーの廃止を発表しています。
このために、高いターゲット精度や広告効果の測定で成長してきたインターネット広告も、今後についてはやや不透明になっています。インターネットユーザーの特定・追跡が困難になると、マスメディアの時代と同じようにサイトの特性で広告を配信する方法に戻るかもしれません。
インターネット広告でユーザーが特定できなくなると、広告主は、自社サイトで、顧客との直接の接触を増やすことが重要になってゆくでしょう。その際に、個人情報の保護に厳重な注意が必要です。
【広島経済レポート寄稿文】