テレビ番組が、「この後、驚愕の事態に」とテロップを入れてCMに入ったり、ドラマが中途半端な展開で翌週に続くになるのは、心理学に基づいています。終わっていないことは、よく覚えているという心理バイアスを利用しているのです。ランキングを1位からでなく下位から発表することや、映画「ジョーズ」や「エイリアン」で鮫や怪物が冒頭から登場せずに興味を維持することも、この効果で説明できます。また、実らなかった恋が忘れられなかったり、途中で諦めたことについて後悔を続けるのも同じです。この認知バイアスは、ツァイガルニック効果と呼ばれます。
ツァイガルニック効果とは
リトアニアの心理学者のツァイガルニック博士は、レストランのウェイターが注文を完全に覚えているが、テーブルへの配膳が終わった後では忘れている事から興味を持ち、研究を始めました。博士が行った実験では、簡単な作業を調査対象者に課しました。半分の人は途中で中断した後で完了し、もう半分は中断なく作業を完了しました。両方のグループが終了した後で、何の作業を行っていたか確認したところ、中断したグループの方が作業の内容をよく覚えていました。このような研究を通じて、やり残したことには緊張感が持続することを発見しました。つまり、人間の脳は、不完全なことに直面すると、その思いを意識から拭えないのです。
マーケティングへの応用
どの商品やサービスも顧客に知ってほしい情報があります。これらの情報を広告やネットで発信しても読んでもらえないのが実情です。この解決のために、映画やテレビと同様にツァイガルニック効果が活用されます。疑問を投げかけられると人間の心理は、その答えを知りたくなる習性を広告活動に活用します。
この効果を利用した手法としてティーザー広告があります。ティーザーとは「焦らし」という意味で、すべての情報を開示しない広告です。これが、ネットの時代になって、より使われるようになりました。広告やSNSで不完全な情報を発信してネットに誘導する手法が多くみられます。ヘッドコピーでは、本文やネットをよく読まないとわからない疑問を投げかけます。例えば「〇〇できた驚きの方法」とか「誰も知らなかったコツ」などが代表的な例です。
この効果はメールでも使えます。メールの開封率を上げるために、答えを開示しない件名をつけることや、以前送ったメールについて確認やECで買い物かごに残ったままの商品について連絡することでも、この効果が働きます。一つのストーリーを複数のメールに分けることも同様です。未完の情報に接して、行動を起こす人が多くいるからです。
さらに、ウエブサイトの構成にも利用できます。サイトの、最初に目に入るファーストビューで興味を惹かなければ離脱されます。ファーストビューは重要ですが、サイト訪問者を引き留めるために、そこに重要な情報をすべて置かず、リンク先に誘導してサイトでの長い滞在時間を確保します。その結果、見込客に、より多くの情報を伝えられます。例えば、食品であれば、「さらに美味しくできるレシピ10のコツ」などの文字を大きく表示することで、興味を惹いてリンク先に誘導するような方法です。
マーケティングでは、様々な心理学の知見が活用されています。ツァイガルニック効果もその中の一つです。
*ツァイガルニック効果は、ザイガルニック効果、ゼイガルニック効果と表記されることもあります。