「文藝春秋」10月号に「脳を鍛える」という特集が掲載されていた。タイトルに惹かれて読んでみたら、色々と参考になることが書かれていたが、その中でブラジルナッツというナッツが水銀中毒を解毒するということが出てきた。日本人は魚をたくさん食べるので水銀濃度が高いそうだが、これが、水銀を中和してくれるのはありがたいと思った。マグロとか大型の魚は特に水銀濃度が高くて、妊婦などはマグロは週一でしか食べてはいけないと聞いたことがある。
それでなぜ水銀を中和するのか気になって調べてみたら、どうもセレニウムが含まれていて、それが良い働きをするようだ。でも、セレニウムは土壌に含まれていて農作物に、場所によって量は違うが、多少は含まれているらしい。ブラジルナッツが採れる場所はセレニウムが多いということなのかもしれない。それからブラジルナッツとは、ミックスナッツの缶に入っているあの巨大なナッツのことだった。名前も知らないで食べているものって、これ以外にも結構あるのだろうな。
一時、セレニウムというか確かセレンという名前でサプルメントを飲んでいたが、今はやめている。止めたのは、写真のトーニングにセレニウムを使い出してからだった。セレニウムは量によってはサプルメントにもなる、し少し量が多いと猛毒らしくて、取扱が難しい物質だそうだ。
毒と栄養補助以外には、写真をプリントした後でトーニングにもセレニウムは使われる。日本では買えないので海外に行くたびに買っていたが、今は使っていない。猛毒だというので使ったり廃棄するのが難しいからだ。セレニウムをたくさん入れて濃くすると赤紫の色がつく。だが、少しだとややトーンが濃くなって、印画紙の塩化銀をコーティングして黒を保存することができるそうだ。そういうことで使っていたのだが、赤紫の色をつけたい訳ではないので、ほんの少しだけ使って、規定以上に薄くしていたので効果があったかどうか分からない。この先何十年かして写真が白っぽく変色していなければ効果があったということだろう。自分の写真がそんなに長い間残るかどうか分からないし、そもそもそんなに長く生きる予定もない。
ブラジルナッツのことを調べて興味を引いたのは、ブラジルナッツの木が非常な高木(50m!)で、その受粉は特殊な蜂が行っていて、その蜂はまた特殊な蘭に寄生して繁殖しているということだ。つまりブラジルナッツの木をどこかに植えれば良いということではなく、木と蜂と蘭の生態系がなければいけないということだ。
これは面白い話だと思った。生物で寄生して体の掃除をしてもらったり守ったりというような共生の関係は海にも陸にもあるが、植物と昆虫の関係というのもあることを初めて知った。本来はどんな生態系もこういうことはあるのだろうが少し崩れても大体は生物も植物も新しい環境に適応していくものだと思うが、この三者はそれができないようだ。セットになっているから環境の変化に弱いのか強いのか分からないが自然と言うのも面白いものだと思った。
それで「文藝春秋の「脳を鍛える」を読んで、本来のテーマとは違う、水銀中毒のことが気になってしまった。普段から魚を良く食べるので、水銀量がおおそうだ。だから、またセレニウムでトーニングをすれば良いかと思った。多少は指につく。でも、それも危険なので、ブラジルナッツを食べてみようと思って、ネットで注文しようとしたらどこも売り切れだった。
写真は、ロンドンのバラ・マーケット。