前門大街はオリンピック前の昨年8月にオリンピックに向けた美観向上の一環として、古い街並をすべて撤去して新しくすべての建物を造り替えた。また、その際に通りは王府井のように完全な歩行者天国になり、前門大街と平行してバスや車が通れる道を東西に通すという大改造を行っている。住宅や商店が密集した場所に広い道路を造れるというのが中国らしい。
それでできあがった街は、建物こそ古い建物をイメージして建てられているが、コンクリートのピカピカの新品なので安っぽく見える。まるでディズニーランドの中の人工の街を歩いているようだ。それに長い通りの両側にたくさんの店舗が並ぶがどれも空いている。この通りを閉鎖して工事している間に、ここにあった店はすべて移転して営業していたが、工事が完了しても何らかの理由で戻って来ていないということのようだ。大改造のために家賃が上がっているのかもしれない。
それでも北京の有名な観光地なので訪れる観光客は多い。この周辺は唐やそれ以前から街があり、特に清の時代には、内城の中にあったすべての商売をここに移した。そのため北京ではレストラン、阿片、売春といった商売はすべてここに集中していたようだ。
故宮が現在の辺りに出来たのは元の時代からで、皇帝の正面玄関にあたる前門の前にあり色々な商売が長い間行われてきた北京の中心であり続けてきた。それが今は寂しい感じだ。そもそも、皇帝が南からの気を取り入れるためにもある前門大街の交通を閉鎖したことから、南からの気が届かず、そのために現在のようなことになってしまったのだろうか。風水の専門家がたくさんいる中国なのに相談しなかったのだろうか。中国では色々な決定が風水に依るというのは誤解なのだろうか。日本の占領時代に現在の長安街を造るために、日本軍が内城の壁に穴を開けて新しい門を造ったのを、北京の気が抜けると批判したそうだが、前門大街の悲惨な現状を見ると気が関係しているような気までしてくる。
皇帝に謁見する各国の使節もここから故宮に向かったそうだが、現在は街が新しく造り直されてきれいになったが、薄っぺらい感じの空き家が並ぶ、歴史のかけらも感じない街になってしまっている。