中野の写大ギャラリーまで、昨年亡くなった奈良原一高さんの写真展「宇宙への郷愁」に出かける。いつもなら自転車だが、しばらく乗っていなくて、空気が全く入っていなかったので歩いて出かけた。片道約40分。天気も良かったのでカメラを持って撮影がてら歩いた。
好きな写真家の1人である奈良原一高さんの写真はいつ見ても素晴らしい。ただその一言。いつの時代のプリントかわからないが、プリントも美しい。そのキャリアを通じてのシリーズが網羅されている。今まで何度も見てきた有名な作品ばかりなので、イメージとしては見慣れている。しかし、実際のプリントを見るのとはまた違う。先日のユージン・スミスといい奈良原一高といい、モノクロのプリントの粒の美しさが際立っている。やはりモノクロプリントの美しさは、黒の深みと階調の豊かさと粒状感だ。
もちろん、その美しさはプリントの美しさだけではなく、どのシリーズでも被写体をとらえるタイミングや構成から作られたイメージの強さは、見るものを捉えて離さない。いったい、1枚1枚の写真を撮るのにどれくらいの時間をかけたのだろう。「消滅した時間」と題されたシリーズのタイトルのように、驚くような瞬間が固定されている。確かに、時間は消滅して、それが私たちに提示される。まさに、写真にしかできないことが奈良原一高さんによって行われていた。
11月まで続く展示が始まったばかりなので、会場には自分も含めて最大3人しかいなかった。おかげで時間をかけてゆっくりと作品を楽しめた。
さすがに大学のギャラリーだけあって、いつも良い展示を行っている。もう少し出かけものだが、今は休みの時しか行けないのが残念だ。
会場には、インクジェットのカラーの作品や実験的な作品が展示されており、写真家としての幅の広さがよく分かる展示なっている。
「宇宙への郷愁」の会期は、9月13日〜11月20日まで。