フィンランドの刑事ドラマ「Boadertown」

by Shogo

アメリカにいた時から、アメリカのテレビドラマが好きだった。最初に好きになったのは、「The Wonder Years」と言う1969年が舞台に13歳の少年が主人公のドラマだ。その頃に流行っていた曲がにたくさん使われていて、見ても聞いても楽しいドラマだった。その後CDも買ってDVDも買っている。日本でもNHKが「素晴らしき日々」と言うタイトルで放送していた。主題歌はジョー・コッカーが歌う「With a little help from my friends」 で、ジョー・コッカーが歌う、このバージョンが好きだったこともあり、よけいに好きになった。今でもこの曲を聴くたびに、自分がその曲を聴いていた時代とこの番組を思い出す。

この番組が人気だった頃に、「Twin Peaks」も人気のドラマだった。オフィスでも、みんなが放送日の翌日には話題にするような注目が集まっているような番組で、他のテレビドラマとは全く違っていた。その他のテレビ番組と違って、デビット・リンチの作品と言うことで象徴的なシーンな意味のわからないシーンが多く、その解釈をめぐって、オフィスでも妄想が繰り広げられた。

その頃から、映画よりもテレビドラマのファンになった。それは、映画は2時間に収めるために都合良くまとめられるが、テレビドラマは詳細が語られる。そこが面白いところだ。

それも、「Friends」や「Who’s the boss?」のようなファミリードラマではなく、刑事物や法廷物だ。特に法廷物は、ずいぶんたくさんのシリーズを見てきた。だが、基本的にはアメリカのテレビドラマが中心で、ヨーロッパのものは見たことがなかった。

それがAmazon Primeがきっかけで、イギリスの刑事ドラマ、「Luther」 (刑事ジョン・ルーサー)を見たことで、アメリカのテレビドラマがつまらなくなった。40分程度で誰でも楽しめるように、ご都合主義の予定調和のドラマで、深みが全くないからだ。たいていはストーリーが始まった途端に結論が見えているようなドラマばかりだ。

それに対して「Luther」は、主人公の造形も含めてシリアスさが違う。またその映像も深みがある。アメリカのテレビドラマのように気軽に作れてないことがよくわかる。主役のルーサーは、正義のためには法を破ることも厭わない型破りの刑事だ。よくあるパターンではあるが、それに説得力を持たせて演じているイドリス・エルバの力によるところが大きい。ストーリー展開も巧みで、意外な結末に驚くことも多い。残念なのは2019年のシーズン5以降は制作が止まっていることだ。主役のイドリス・エルバはその後映画に活動の場を移しており、そのためにこのテレビ番組の制作できないのかもしれない。シーズン6が公開されることを待ちたい

もちろんイギリスの作品でもバラエティに飛んでいるのは事実。お笑い系もある。でも、どちらかといえば、シリアスだ。

その後に印象に残っているのは、「Wallander」(刑事ヴァランダー)。スウェーデンの推理作家ヘニング・マンケルの小説が原作だ。以前読んだ「北京から来た男」には驚くともに北欧の作品を読むきっかけとなった。そのマンケルの原作で、BBCの制作だから、見始めると面白く、それもすぐに見終わった。刑事ヴァランダーの人物造形も共感できる部分があり、説得力もあった。

「Wallander」は、BBC制作だが、マンケルの原作に合わせて舞台をスウェーデンに置いたストーリーになっている。このためやはり北欧の美しい風景と光がこのドラマに映像面からも深みを与えている。

そして今日の本題は、この1週間で見た「Boadertown」だ。これはフィンランドの刑事の物語。 舞台はロシア国境から30キロメートルしか離れてない小都市、ラッペンランタ。 ヘルシンキとロシアのサンペテルブルクのちょうど中間あたりになる。経済的にはロシアの影響を強く、ストーリーにロシアのマフィアが悪役で登場する。 また主人公の同僚は、ロシアで警察のような情報機関のような組織で働いていた経歴があり、その以前のロシアの組織に関係する事件も登場する。

主人公は、アスペルガー症候群の症状を持つ天才的な記憶力と推理力を持つ警察官だ。全体に大きなストーリーがあり、各エピソードに、小さな事件が起こって、それを解決しながら、結末に向かう。それぞれのタイミングで、主人公はその記憶力と推理力を生かして一つ一つ事件を解決しながら、最大の謎を解決していく。

この刑事ドラマのストーリーに、主人公の家族が絡んでゆく。脳腫瘍患者の妻とティーンエイジャーの娘。この3人の関係が非常に良く、ドラマのもう一つの魅力になって、ドラマを貫く縦糸になっていく。

フィンランドに行った事はないがきっと美しい場所なのだろうか、このドラマでは冬の雰囲気の森が多く、あまり明るい景色は登場しない。それが、この街の起こっている悲惨な事件と妻の病気やティーンエイジャーの娘の苦悩を思いやる主人公の心象風景のように見えてくる。このドラマの良さの1つもやはりその映像だ。

ストーリーでは、ロシアの犯罪者や経済力の影響が色濃く描かれる。ウクライナの問題もそうだが、ロシアのような、21世紀になってまだ隣国の侵略を計るような国家に接しているフィンランドの恐怖を感じさせる。

特にこのドラマで毎回楽しみにしていたのは、その主題歌。なぜか英語で歌われる歌声が心地よかった。Maria Holm Mortensen という人が歌うCLOSER だ。

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